肺胞には毛細血管が網の目のように取り巻いています。全身を巡った血液は、心臓を経由して、肺胞までたどり着き二酸化炭素を吐き出します。それと同時に、肺胞のなかの酸素が血液の中に取り込まれます。

これが私たちが無意識にしている呼吸のメカニズムです。このようにして私たちは、酸素を血液に取り込み、腸から吸収した栄養と結合させ、生命活動に必要なエネルギーを生み出しているのです。

出典=小林 弘幸、末武 信宏(監修)『最高の体調を引き出す 超肺活』(アスコム)

しかし、肺胞が壊れるなど肺が弱っていると、肺胞から取り込める酸素量が減ります。これを脳は酸素を運ぶ血液が不足していると認識し、心臓にもっと血液を送るように命じます。すると、心臓や血管に負担がかかり、肺以外の部位に疾患が発生してしまう危険性があります。

つまり肺は、単に酸素と二酸化炭素を交換するだけの場所ではなく、心臓や全身の血管の健康とも深く関わっているということです。

これまで多くの方が残念ながら肺の状態に無関心でした。じつは肺は20代から衰え始め、とくに喫煙者は40代になると急速に機能低下が進行します。そして残念ながら、重要な役割を果たしている肺胞は、一度壊れるともとには戻らないのです。

年間9万5000人が肺炎で命を落としている現実

肺の機能が衰えると、私たちにどんな不調が降りかかってくるのでしょうか。

真っ先にダメージを受けるのが、免疫システムです。健康な人の呼吸器には、体に有害な物質から体を守る防御システムが備わっています。

「綿毛」は1分間に1000回を超える速さで動いており、気管内部を覆っている粘膜層を動かします。この働きによって、ウイルスなどの病原体が侵入してきても、粘膜層が捕獲し、捕らえられた病原体は咳とともに口に戻され、食道に飲み込まれる仕組みがあります。

ほかにも肺胞の表面に待機する免疫細胞による迎撃や、血液中を巡回している別の免疫細胞を呼び寄せ、徒労を組んで病原体を撃退する免疫システムも肺は備えています。

これらの免疫システムが肺の衰えによって機能しなくなると、感染症が重症化する危険性が出てきます。

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また、肺の病気といえば代表的なのは肺炎ですが、じつは年間約9万5000人もの方が、肺炎によって命を落としてしまっていることをご存知でしょうか?

肺炎とは、気管支や肺に炎症を起こし、肺の病態が著しく低下した状態を指します。ウイルスが原因によるものや、肺胞を包んでいる間質という組織が炎症を起こして発症するものなど、肺炎と一口で言っても原因は様々です。