「緊急事態宣言は大したことがない」というメッセージになる

6月16日付の記事<「不信任案は出しても、五輪中止は求めない」誰にも期待されなくなった立憲民主党の体たらく>で指摘したように、菅首相は6月9日の党首討論で、共産党の志位和夫委員長に「新たな感染拡大が起これば、重症者、亡くなる方が増える。そうまでして五輪を開催しなければならない理由は一体何なのか」と質され、次のように答えていた。

「国民の生命と安全を守るのが私の責務だ。守れなくなったら(東京五輪は)やらないのは当然だ」

この菅首相の答弁は東京五輪開催への決意を示す一方で、場合によっては感染拡大での中止もあり得るという意味にも取れる。

特措法の枠組みでは、緊急事態宣言はもっとも厳しい措置だ。それにもかかわらず五輪を実施することになれば、「緊急事態宣言は大したことがない」というメッセージになってしまう。事実、緊急事態宣言の発出による人流の抑制は、回数を重ねるごとに効果が弱くなっている。

今後、さらなる感染拡大が起きたらどうするのか。菅首相は「東京五輪の中断」という選択肢も視野に入れておくべきである。はたして、その検討をどこまで進めているのだろうか。

1カ月半前に「今夏の開催の中止を」と主張していた朝日社説

1カ月半前の朝日新聞(5月26日付)は大きな1本社説を掲載し、その中で「新型コロナウイルスの感染拡大は止まらず、東京都などに出されている緊急事態宣言の再延長は避けられない情勢だ」と書き出し、東京五輪の中止を求めていた。

問題の緊急事態宣言は、いったんは解除されたものの、すぐに4度目の宣言が発令された。朝日社説のこの読みは当たったことになる。

朝日社説はさらに「この夏にその東京で五輪・パラリンピックを開くことが理にかなうとはとても思えない。人々の当然の疑問や懸念に向き合おうとせず、突き進む政府、都、五輪関係者らに対する不信と反発は広がるばかりだ」と指摘し、「冷静に、客観的に周囲の状況を見極め、今夏の開催の中止を決断するよう菅首相に求める」と主張していた。