なぜ「五輪熱」が冷めていることに気付かないのか

7月12日、東京都に緊急事態宣言が発令された。期間は8月22日まで。宣言の発令は今年に入って3度目、通算だと4度目となる。

首相官邸に入る菅義偉首相=2021年7月13日、東京・永田町
写真=時事通信フォト
首相官邸に入る菅義偉首相=2021年7月13日、東京・永田町

東京オリンピック(7月23日~8月8日)は、緊急事態宣言下で開催されることになる。東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会は7月8日、東京と埼玉、千葉、神奈川の1都3県で行われる競技について「無観客で開催する」と発表した。

菅義偉首相は東京五輪の「有観客」にこだわっていたが、結局、「無観客」に妥協することになった。裏を返せば、菅首相はなんとしてでも東京五輪を開催したいのである。開催されれば、必ず盛り上がると考えているのだろう。だが、現実は違う。

菅首相は6月9日の党首討論で「バレーボールの東洋の魔女の回転レシーブ、マラソンのアベベ、柔道で日本選手に敬意を払ったオランダのヘーシンク」とかつての名選手の名前を挙げてオリンピックを礼賛していた。しかし57年前の東京五輪(1964年10月開催)と現在では状況がまったく異なる。

長引くコロナ禍で五輪に対する国民の熱意は薄れてしまった。菅首相はどうしてそこに気付かないのか。東京五輪を成功させ、その勢いに乗って秋の自民党総裁選と衆院総選挙を乗り切って首相職の続投を狙うことだけを考えているのだろう。だから日本社会が俯瞰できず、世論が読めなくなっている。