資金支援を要請しながら、MBOで非上場化するというシナリオ

東芝の社外取締役にはCVC日本法人最高顧問の藤森義明氏もいる。この2人が「結託」してCVCを使ってエフィッシモらアクティビストの追い出しを画策しているというシナリオだ。

上場を維持するためにアクティビストに資金支援を要請しながら、自分の立場が悪くなると追い出しを図り、MBOで非上場化する。こうした動きは、取締役会議長、さらには指名委員会委員長として東芝のガバナンスの先頭に立っていた永山氏に不信感を抱かせることになった。

永山氏は自ら率いる指名委員会で「今度(21年6月末)の定時総会で車谷氏を再任しない」という報告を受け、解任動議も視野に入れていたとされるが、その前に車谷氏は自ら辞任を申し出て東芝を去ることになった。そして、その車谷氏を追うように藤森氏も社外取締役を辞めた。

車谷・藤森ペアの「追い出し」に成功したエフィッシモらだが、まだ彼らの東芝経営陣への追及は終わらない。彼らの要求で立ち上げた外部の調査委員会が昨年の総会について「東芝が経済産業省と一体となり株主の権利を制約しようとした」とする報告書を6月に公表したのだ。

写真=iStock.com/Sundry Photography
※写真はイメージです

「改正外為法」を使って経産省とタッグを組んで株主に圧力

東芝の監査委員会は「不当な圧力が加えられたことを疑わせる証拠は認められない」としていたが、それを全面的に否定。結局、今回の総会で永山氏も東芝を追われることになった。

東芝は、日本で初めて委員会等設置会社に移行した大企業だ。しかし、その後の不正会計問題に加え、今回の騒動で、ガバナンスの不全は広く知られることになった。

ここまでなら東芝という一企業の話だが、それでは終わらない。外部の調査委員会は、アクティビストを排除するために経産省と東芝が結託していたと指摘しているからだ。

アクティビストの執拗な経営への介入に、東芝は先に改正された外国為替及び外国貿易法(改正外為法)を根拠に経産省とタッグを組んで圧力をかけたとされる。同法では原発や防衛産業など国の安全保障にかかわる企業については株式を1%以上もつ海外投資家の権利を一部制限できるよう定めている。同法を盾にアクティビストの影響力をそごうという算段だ。