いかの塩辛は、減塩志向で食中毒が発生した

食品の日持ちは、味付けによっても変わります。「これまでの経験から、この程度は日持ちするはず」という思い込みは通用しません。

2007年に宮城県で製造されたいかの塩辛により腸炎ビブリオ食中毒が発生し、全国の約600人が症状を訴えました。賞味期限内であっても、食中毒につながったのです。自治体などの調査の結果、この塩辛は伝統的な高塩分熟成タイプではなく、塩分4%程度の低塩で、食塩による食中毒菌の増殖抑制効果を期待できないのに製造時の管理が不適切だったことが判明しました。

この後、厚労省は低塩分の塩辛の製造、流通、販売等において、一貫した低温管理(10°C以下)を行うよう業者に指導することなど、全国の自治体に通知しています。

消費者も「塩辛は……」という思い込みにとらわれるのではなく、容器包装に書かれている保存方法を守りましょう。もちろん、開封後はどちらの塩辛も冷蔵庫に保存しなるべく早く食べきるべきです。

参考情報
厚労省・いかの塩辛を推定原因とする腸炎ビブリオ食中毒の発生について
食品分析開発センターSUNATEC・イカの塩辛で腸炎ビブリオ食中毒?

「新鮮な鶏肉だから安全」ではない

新鮮であれば、食中毒菌は増殖しておらず安全……。多くの人はそう考えていると思いますが、当てはまらない菌もあります。消費期限・賞味期限の話から少し脱線しますが、鶏肉のカンピロバクター食中毒の事例をご紹介します。

厚労省の食中毒統計によれば、細菌による食中毒で発生事件数がもっとも多いのはカンピロバクター。加熱して食べなければならない鶏肉の生食が主な原因です。カンピロバクターは鶏の腸管内にいて、食鳥処理した時にカンピロバクターが肉につきやすく、わずかな菌数であっても食中毒につながります。

興味深いことにカンピロバクターの多くは嫌気性菌なので、肉の表面の菌は空気に触れると死にます。そのため、「空気に触れている時間の短い新鮮な肉の方が、むしろ危険ですよ」と話す専門家すらいるほど。だからといって、空気にさらした鮮度の落ちた鶏肉を生で食べてはダメ。肉と肉の間で空気に触れていないカンピロバクターが増えていたり、サルモネラ属菌などが増殖している可能性もあります。鶏肉は、しっかり加熱して食べることをお勧めします。

参考情報・厚労省・食中毒