「冬場、卵は57日間、生で食べられる」は単純化しすぎ

しかし、冬場は常に10℃を下回るでしょうか? スーパーマーケットの店内は暖房され、安売り卵が室温で販売されています。流通のさまざまな段階や、消費者が購入してから冷蔵庫に収まるまで、消費者の冷蔵庫の開閉による温度変化など、現代社会においては冬場でも10℃を超えそうな環境はいくらでもあります。

実際に、日本の四季における温度変化等も加味してサルモネラ属菌の増殖を調べた実験も行われ論文発表されています。10℃で18日間保存していた卵は新鮮さを失い卵黄膜が弱くなっており、リスクはあることが確認されています。

こうしたことを考慮すると、「冬場、卵は57日間、生で食べられる」という情報はあまりにも短絡的、単純化しすぎなのです。サルモネラ属菌食中毒にかかったら、命を落とす場合もあります。

プラスチックパックに入っている卵
写真=iStock.com/karimitsu
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「卵は賞味期限が切れたら加熱して食べる」と考えたほうがいい

卵は通常、産まれた当日、または翌日には集められ、その日のうちに洗卵パック詰めして出荷されます。多くの業者は輸送や店頭陳列段階も冷蔵するなど管理に努め、消費者に対しても冷蔵庫で保存するように表示しています。そのうえで、年間を通しておおむね産卵後2週間を賞味期限としています。

上記の表から考えると、期限が切れても1週間ぐらいは大丈夫でしょう。でも、消費者は自分が食べる卵について、産卵からの長い工程でどのような管理が行われたか、細かくは把握できません。ならば、生でいつまで食べられるかを追求するよりも、「卵は賞味期限が切れたら加熱して食べる」をだれもが知る“常識”にしたほうがよいのではないでしょうか。

参考情報
JA全農たまご株式会社・鶏卵の日付等表示マニュアル−改訂版
・Miyahara, M. et al, Shell Eggs and Salmonella Enteritidis in Various Seasons in Japan. Biocontrol Science 7, 197–201 (2002).
食品安全委員会・卵の安全性;サルモネラについて