自分より年齢も役職も上の“抵抗勢力”に苦戦

私もDXを推進する過程で、抵抗勢力にはずいぶんと悩まされました。自分より年齢も役職も上の人が抵抗勢力となるケースが多いからです。その理由は、「もしプロジェクトが成功した場合、自分たちの地位が脅かされる」「デジタル化された場合、自分はついていけない」などといった不安の気持ちでした。この不安な気持ちが、抵抗勢力を生み出してしまうのです。

私が大企業でDXを進めていた頃の話です。プロジェクトが進み、周りの理解も得られるようになってきたと思っていた矢先、私たちの前に大きな壁が立ち塞がりました。変革に対する人の抵抗です。

私は元々グループで育った人間ではなく、外部から転職してきた人間です。いわば“外様”である私がプロジェクトを推進することを面白く思っていない人たちが、プロジェクトが進むに従って、“抵抗勢力”として立ちはだかったのです。そのほとんどが、自分より年上で、役職も上の人たちでした。

自分より若く、在籍期間も短い担当者が何か新しいことを始めると、前から会社にいる人は、どんなふうに捉えるでしょうか。おそらく、自分たちの培ったものを壊そうとしているように感じさせてしまっていたのではないかと思います。

写真=iStock.com/enviromantic
※写真はイメージです

この勢力には参りました。面と向かって意見を言うのではなく、表には出ない老練な手口で足を引っ張ってきたからです。

社長を味方につけ、1年半の“粘り勝ち”を達成

「それは素晴らしい」と私の意見を褒め称えながらも動こうとしないのは日常茶飯事で、ときには、「鈴木は銀座で飲み歩いており、リーダーとして問題がある」といった怪文書を流されたりもしました(ちなみに私はお酒を飲まないので、飲み歩くことは不可能なのですが)。

悩む日が続き、当時の社長に相談させてもらいました。その社長は人格者で、悩みの相談にも懇切丁寧に応じてくださいます。お話しするうちにいつの間にか頭の中が整理されて、悩みが消えてしまうのです。このときも、抵抗勢力の扱いについて話を聞いてくださいました。

そして、コミュニケーションの大切さを改めて痛感した私は、「毎週金曜日の朝8時から1時間、プロジェクトの進捗報告をさせてください。そのときには、各事業会社の社長も同席させてもらえないでしょうか」とお願いをしました。すると社長は「わかりました。そうしましょう」と、笑顔で了承してくれたのです。

その後、事業会社の社長同席のもと、プロジェクトの進捗報告を続けました。私の覚悟が伝わったからでしょうか。1年半、毎週欠かさずに継続するうちに、やがて抵抗勢力は大人しくなっていったのです。