夫が家事をしないのは、ある意味当然

——共働きで、妻にも稼ぎのある世帯でも、家事育児の担い手は妻で、夫はほとんど戦力にならないというケースも多いです。それはなぜでしょうか。

【田房永子さん】それは、「家事・育児」を積極的にやらなくていいのは男性の特権だからだと思います。

主人公のふさ子の母も専業主婦ですが、私たち(1978年生)の母親世代は、結婚したら女性は仕事を辞めて家庭に入るのが一般的でした。

私たち世代も「男性は一生働いて家族を養う代わりに、家事育児は大幅に免除される」「女性は家庭に入って家事育児をちゃんとすることが一番の仕事」という空気感の中で育ってきた人が多いと思います。先生とか大人からハッキリ言われたり、10年くらい前まではその男女観を前提に作られたテレビ番組が多かったです。

私は「どうして男は父親になっても、妻から尻を叩かれないと他人事な人が多いんだ」と立腹していました。だけどソファでくつろげる体験をしたときから、「こりゃあ、自分からやるはずないわ」と思うようになりました。そんな特権をそうそう手放すわけがないですよね。

仕事ってそんなに大変じゃないって言いたい

——男性は生まれながらにして特権を持っているということですね。それでは、女性と男性の特権を両方体験してみてどう思いますか?

【田房永子さん】私は仕事と家事育児の両方を経験し、時間が極端に拘束される特殊な職業を除いては、仕事よりワンオペ家事・育児の方が絶対に大変だと実感しました。一概に言うな、って怒られるかもしれないけど、赤ちゃんや幼児の育児をしながらの家事はどんな仕事より大変だと思うんです。理由はいろいろあるけど、何より時間ですよね。

保育園などのお迎え担当は絶対に時間に遅れられないし、子どもを寝かしつけているうちに一緒に寝てしまったら、自分の時間はゼロです。いっぽう、仕事だけしている方は、出勤したらその後は帰宅時間をちょろまかして寄り道もできる。今はコロナ禍で在宅勤務が増えて、状況が変わってきていますが。