自動車メーカーを惑わす「エネルギー基本計画」の改定

バイデン米大統領が主催して4月下旬にオンラインで開催された気候変動に関する首脳会議(サミット)で、菅首相は日本が温暖化ガスを2030年度に2013年比で46%削減する目標を表明した。従来の26%削減から大幅に引き上げ、「50%の高みを目指す」とも宣言した。

しかし、福島第一原子力発電所の事故以降10年を経ても政府のエネルギー政策は一向に軸足が定まらない。再生エネで本命視されつつある洋上風力発電は商業化にやっと動き出す段階を迎えたばかりで、CO2を出さない「純国産」エネルギーと政府が標榜する原発がベースロード電源に行き着くまでの道のりは険しい。

政府は今夏、エネルギー基本計画を改定する予定だ。菅首相が温暖化ガスを2030年度に2013年比で46%削減する目標を表明したことを踏まえて現在、改定作業が進められている。

基本的には2030年度の電源構成目標は2019年度実績で約18%にとどまる再生エネの比率を30%台に引き上げ、20%程度に据え置く原発と合わせて「脱炭素」を加速する方向だ。

しかし、計画通り順調に進むかは見通せない。そこが日本の自動車メーカーを惑わす大きな要因となっている。

世界の自動車メーカーに加わる「脱エンジン」への圧力

グローバル市場で事業展開する日本勢にとって、巨大IT企業が本格参入をもくろむEVシフトの状況下で、日本のエネルギー事情だけを見据えているのでは生き残れない。

さらに、国際エネルギー機関(IEA)は5月18日、2050年までに温暖化ガスの排出を実質ゼロとする工程表を公表した。その中で輸送部門に対しては2035年にガソリンエンジン車など内燃機関搭載の新車販売の停止を求めた。世界の自動車メーカーには「脱エンジン」への圧力が高まっている。

日本勢でいち早く「脱エンジン」を打ち出したホンダの選択肢は一つの解でもある。

一方で、トヨタが取り組む全方位で多様化した電動化に取り組むのも一つの方向性だ。

トヨタは、スマートフォンをはじめ電子機器で常態化した「水平分業」がEV市場を支配しかねない現状で、あくまで完成車メーカーとして「垂直分業」での完成度の高い電動車の提供を維持する「トヨタウェイ」で臨む。それもこれも、この先の電動車の覇者を容易に予測できないディスラプション時代の姿なのかもしれない。

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