2030年時点の日本の「脱エンジン車」は10%を予想

トヨタは2022年3月期の世界販売目標を1055万台としており、このまま年間1000万台ペースで推移すれば、2030年には2割程度がEV、FCVの「脱エンジン車」となる。

トヨタが今回公表した電動化計画でひと際目を引いたのは、地域別に示した目標値だろう。世界に先駆けてHV「プリウス」を量産して電動車市場を牽引してきたトヨタだけに、2030年時点(中国だけは2035年時点)での地域ごとの電動車の販売目標比率はHVを含めた場合で、北米の70%を最低ラインに日本が95%、欧州、中国が100%と極めて高い目標を設定している。

これに対し、HVを除くEV、FCVだけに絞った販売目標比率は中国の50%を最高に欧州で40%に設定したものの、北米は15%、お膝元の日本に至っては10%という低い水準にとどまる。

この圧倒的な地域差こそが日本車メーカーが電動化を巡って翻弄されるジレンマを象徴している。つまり現実にはまだHV頼みなのだ。

2019年12月10日、デュッセルドルフのビジネス街に駐車された赤いテスラモデルSは、青い電源コードで充電ステーションに接続されている
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「ガソリン車禁止の政策は、日本の強みを失わせる」

ホンダが「脱エンジン」を宣言した前日の4月22日、日本自動車工業会の記者会見で会長を務めるトヨタの豊田章男社長は「ガソリン車を禁止するような政策は技術の選択肢を狭め、日本の強みを失うことになりかねない」と述べ、「脱エンジン」に大きく傾く流れにくぎを刺し、HVを含めた多様な電動化を進める重要性を強調した。

その背景には日本固有のエネルギー事情が絡む。日本勢がすべてホンダ同様に「脱エンジン」に切り替えれば、それだけ発電量を増やさなければならない。化石燃料に多くを依存する日本のエネルギー構造を考えれば、電動車が消費する電力を化石燃料由来の電力で賄うとなれば、むしろカーボンニュートラルへの道は遠のいてしまう。製造過程で費やされる電力を加味すれば、環境負荷の高い日本車の輸出もままならなくなる。

欧州は、風力、太陽光といった再生可能エネルギーがベースロード(基幹)電源として確立しているため、一気呵成かせいにEVシフトを進め、HV不要論に傾く。

しかし、日本のエネルギー構造の現状は「脱エンジン」を掲げるには心もとない。