予想以上の応援購入、1年間閉店を延期

閉店を惜しむファンからの声も相まって、応援購入は目標に対して454%、総額1130万円を超えました。また、この反響を受けて支援が集まり、実店舗を1年間であれば延長営業できるようになるという思いがけない展開に。現在は、新型コロナウイルス感染症とも適宜向き合いながら、全席個室、事前予約制、食べ放題・飲み放題という新たなスタイルでの店舗運営を続けています。

この豚組しゃぶ庵のプロジェクトを振り返ると、「飲食店での楽しみを自宅でも体験できる機会」がリターンとなっていることがポイントでしょう。単なる美味しい豚しゃぶのセットならば、他の通販サイトでも見つかるかもしれません。しかし、「豚組しゃぶ庵で体験していた楽しみの再現」は、彼らにしかセッティングできません。

彼らが売り始めたのは、開店から10年以上続けてきた、ファンとの交流をベースにした「体験」でした。そして、こういった「体験」もインターネットで売れる時代になってきていることが、大切な一つの可能性なのです。

インタビュー:お店と同等の「体験」を届ける

六本木に店を構える豚しゃぶ専門店、豚組しゃぶ庵。コロナ禍の影響で一時閉店に追い込まれた同店が立ち上げた「『豚組しゃぶ庵』オンライン移転&店舗再出店プロジェクト」には、目標金額の4倍を上回る1100万円以上の応援購入が集まりました。豚組しゃぶ庵が今回のプロジェクトで見出せた光明、それは「店にしばられない体験としての提供価値」でした。

グレイス 創業者・オーナー/トレタ 代表取締役 中村仁さん 『Makuake式「売れる」の新法則』(日本経済新聞出版)より

【國吉】コロナ禍に見舞われて、豚組しゃぶ庵は一時「もうダメかもしれないな」ってくらい閉塞感に襲われていました。お店を開けてもお客さんは来ないし、お弁当などのテイクアウトを始めても、1日2~3セットしか売れなくて。だから最初は「待ってても来ないなら、こちらから売りに行こう!」という安直な発想から「豚組のしゃぶしゃぶセットをおうちまでお届けにあがります!」と、Facebookの友達限定で手売りを始めたんですよね。そしたら、結構な注文が来て、皆さんにすごく喜んでいただけて。

【中村】しゃぶしゃぶって、家でも簡単にできる料理なんですよ。だから外食機会が減っていくと、たまの外食は「せっかくだから家で作れないものにしよう」と選択肢から外れがちになる。ただ、実際にこちらからご家庭に届ける売り方をしてみて、この「家でもできる」という事実が、「お店の味を家でも再現できる」という強みにもなるのでは、と気づきました。

【國吉】業態にこだわらず、「“最高のしゃぶしゃぶ”という体験をいかに届けるか」と考えてみると、店に来たようなクオリティを家に届ける「オンライン飲食店」みたいな概念が成立するんじゃないか。それを実験してみようと、使わせてもらったのがMakuakeでした。