利益確定に動き出した

さらに4月27日と28日に行われた連邦公開市場委員会(FOMC)後の記者会見で、パウエル議長が「米国の株式市場にはフロス(小さな泡)が現れている」と述べた。その意味は、低金利環境が続くとの楽観を根底に多くの投資家が先端企業などの成長への期待を強めた結果、米国株式市場に“バブル”の兆候が表れていることだ。

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その結果、株価が割高だと考える個人投資家(“ロビンフッダー”)や機関投資家が追加的に増え、株価が大きく上昇したテスラなどに利食いの売りを仕掛けた。それはGAFAMやビデオ会議システムを提供するZOOMなど、多くのIT先端企業の株価下落に当てはまる。“最強のインデックス”と呼ばれる「ナスダック100指数」に連動するETFを売りに回るヘッジファンドも増えるなど、割高感が高まる中で利益確定に動く投資家は多い。

財政出動で高まるインフレ懸念

それに加えて、米国経済におけるインフレ懸念が高まり、金利が上昇するとの警戒感が増したことも、米国の株価下落の要因だ。物価上昇の要因として重要なのは、経済対策とパイプラインの操業停止だ。

3月、米国経済が自律的に持ち直す中で、バイデン政権はコロナ禍での個人消費などを支えるために1.9兆ドル(約200兆円)の経済対策(追加財政出動)を成立させた。その結果、米国経済が"高圧経済"(経済全体で需要が増加し、景気の過熱感が高まること)に向かい、物価が勢いよく上昇し始めるとの見方が増えた。

それに加えて、5月7日にはサイバー攻撃によってコロニアル・パイプラインの操業が停止し、ガソリン価格の上昇懸念が高まった。車社会の米国において、ガソリン価格の上昇は消費者物価をはじめ経済全体での物価上昇に無視できない影響を与える。

それらを反映して、米国の債券市場では、“ブレークイーブン・インフレ率(市場参加者が予想する物価上昇率を示す指標)”が上昇した。5月10日にはブレークイーブン・インフレ率が5年物で2.7%台に上昇し、リーマンショック後の最高値を付けた。10年のブレークイーブン・インフレ率も2.5%台に上昇した。