少子化が解決できない理由、霞が関にも

ワーク・ライフバランス社は2020年8月に、「コロナ禍における政府・省庁の働き方に関する実態調査」も行っており、回答者の約4割が「単月100時間」を超える残業をしていたことが判明した。メンタル疾患の罹患率は民間企業の3倍、若手の離職率は6年前の4倍となっているという。ちなみに内閣人事局が2020年10月から11月に行った、中央省庁勤務の国家公務員の残業時間の調査でも、20代の総合職の3割以上が過労死ラインと呼ばれる月80時間を超えていたことが明らかになった。

小室さんは、こうした過酷な労働環境に限界を感じ、優秀な人材が集まらなくなれば、政策の質が低下し、国益が大きく損なわれると警笛をならす。

さらに、官僚の作る政策と、実社会の現場の感覚との間に、ずれが生じてきていると指摘する。

「私は今まで、多くの政府の委員会の委員をやってきました。そこで『少子化の要因は長時間労働にある』という、働く女性であれば、子育てとの両立を難しくする要因として当たり前に感じていることを政府の委員会で話すと、官僚の人たちからは、『それエビデンス(証拠)あるんですか』と言われるんです。彼らには、生活の実感がない。霞が関では、育児との両立に苦労したことのない人だけが真ん中を歩いて、子育てなどで時間的制約がある人は、暇な部署に異動させられるのが現実だからです」という。

「この国がずっと少子化を解決できずにいる大きな理由は、霞が関サイドに、子育てとの両立に苦労を抱えながら仕事をしている人がいないから。実社会の現場の課題が、政策としっかりつながっていないからだと思います」

「テレワークなし」が4割も

とはいえ、昨年8月の調査と今回の調査とで進展があった点も見られた。テレワークの実施と、「議員レク」と呼ばれる官僚の国会議員への説明の方法だ。

「議員レクに関しては、前回17%だったのが、67%オンラインでできるようになった。昨年調査を行って、現状が“見える化”されなければ絶対に起きなかった変化だと思います。また、前回は議員とのやり取りの9割がファクスだったのですが、メールの割合が13.9%から69.2%(「そう思う」「強くそう思う」の合計)に急増していました」

ただ、今回の官僚のアンケートでは、『テレワークを全くしていない』と答えた人が4割にも上り、『テレワークを禁止等されている』と答えた人も35%に上った。特に大臣へのレクチャー(説明)は、対面を求められる場合が多く、電話、オンライン化、ペーパーレス化が進んでいない。コロナ禍で、政府は民間企業に7割テレワークを進めるようにと呼びかけているにも関わらずだ。