忖度しすぎ、丁寧すぎる答弁書
朝比奈さんは、官僚を早く帰らせ、形式的に残業時間だけを減らそうとすると、仕事の丁寧さが失われ、ミスが増える要因にもつながると懸念する。まずは、仕事を減らさなければならないという。
「国会の答弁書など、官僚が丁寧に作りすぎるんです。もちろん、適当に答えてというわけにはいかないですが、国会は大臣と国会議員が議論する場なんですから、『こういう形で答弁してください』と参考にメモを渡す程度でいいはず。でも実際は、大臣が読み上げるための文章一言一句を官僚が作っている。さらに、『この大臣は細かい字が読めないから14以上の巨大なフォントで作りなさい』などといった指示まである。官僚側の問題でもありますが、『念のため』と忖度しすぎて、ほとんど使われないような資料までも入れている」
労働時間を減らすには、役所の幹部や大臣の世話、調整プロセスにかける時間を減らして簡素化することが必要だと、朝比奈さんは指摘する。そうすれば、もっと政策の中身の議論に時間をかけられ、若手官僚もやりがいを持って仕事ができるはずだというのだ。
前述の玉木議員も、今起きている霞が関からの人材流出は、現場からの反乱を意味しているのではないかという。
「官僚に勤務環境、時間、家庭を犠牲にすることを強いて、わが国の政策立案は成り立っていた。それがもう耐えられなくなってきたんですよ。『変えられないなら去るしかない』と、多くの人が役所を去り始めている。この動きに対して、政治家はもっと敏感にならないといけない」