外国人留学生の悲劇と入管庁の罪

留学生たちが捏造書類でビザを得ていたとしても、彼らだけを責めるのはこくだろう。批判されるべきは、ビザの発給対象にならない外国人までも「留学生」として受け入れ、日本人の嫌がる仕事で利用した揚げ句、稼いだ金を日本語学校などの学費として吸い上げるという日本側のシステムだ。

その点で、入管庁の罪は極めて重い。同庁がビザの審査を適正に行ってさえいれば、ソナムさんの悲劇が起きることはなかった。スリランカ人女性にしろ、同じことがいえるかもしれない。

出井 康博『移民クライシス 偽装留学生、奴隷労働の最前線』(角川新書)

コロナの影響でアルバイトを失い、生活に困窮する留学生が急増している。

その一方で、入管当局からビザの更新を却下される留学生が目立つ。更新ができなければ、彼らは日本に留まれない。つまり、入管庁は自らビザを発給しておきながら、労働力として不要になると一転、留学生たちを日本から追い出そうとしているわけだ。

名古屋入管がスリランカ人女性の仮放免をこばんだ背景にも、そんな事情があるのではないか。以前から入管庁は、スリランカをベトナムやネパールと並び不法残留となる留学生が多い「問題国」の1つとみなしている。だからなおさら、女性に非人道的な対応を取ったように私には映る。

留学生たちの悲劇は、今後もさまざまなかたちで起きるに違いない。それに伴い、入管庁が犯した罪もあらわになっていくことだろう。

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