正確に把握されない外国人感染情報

新型コロナウイルス感染症のクラスター(感染者集団)発生場所としては、病院や高齢者施設に加え、飲食店やカラオケ店などが指摘される。一方、世に知られることなく、少なからずクラスターが起きていると思われる場所がある。外国人実習生や留学生の住居や就労先がそうだ。

新型コロナ感染者の国籍は、政府の方針で公表されていない。厚生労働省の「新型コロナウイルス感染症の国内発生動向」によれば、2021年5月5日時点で「日本国籍が確認されている者」が11万1539名に対し、「外国籍が確認されている者」は5001名とある。しかし、両者を合わせても累計感染者数の2割程度にすぎず、このデータだけでは在日外国人の感染実態はよくわからない。

また、実習生や留学生がクラスターに含まれていても「従業員」などとしか報じられず、会社名も企業側が同意しなければ、自治体は基本的には明らかにしない。

だが、筆者のもとには外国人の感染情報が次々届いている。とりわけ目立つのが、ベトナム人の感染だ。

たとえば、2021年4月に西日本の食品加工工場で起きた県内最大規模のクラスターである。新聞などには「事業所の寮で感染が広がった」といった程度の情報しか載っていないが、会社関係者によれば、感染者の大半は「ベトナム人実習生」だったのだという。

2月には、やはり西日本の日本語学校の留学生寮でもクラスターがあった。この学校の留学生はベトナム人が多く、感染者にも相当数含まれていたと見られる。

高齢女性の手を握る若い女性の手
写真=iStock.com/fizkes
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日本で感染し、母国に持ち込むケースが

日本ほど感染が広まっていないベトナムからも、気がかりなニュースが届いている。ベトナム保健省によれば、同国では4月12日からの1週間で89人の新型コロナ感染者が確認された。全員が海外からの入国者だが、うち4割以上の39人が日本から帰国したベトナム人なのだという。

ベトナムと日本の間では定期便の運行が停止していて、ベトナム人帰国者は皆、チャーター便の利用者だ。在日ベトナム人たちの話では、チャーター便は4月中旬には週2〜3便が飛んでいた。その乗客の「39人」が感染していたとすれば、割合は決して小さくない。

在日ベトナム人の数は2020年末時点で44万8053人に達し、12年から8倍以上に増えている。その数は、在日外国人として中国人に次いで多い。出稼ぎ目的で、実習生や留学生として来日するベトナム人が急増した結果である。コロナで帰国を希望しているのも実習生や留学生が多い。チャーター便でベトナムに到着後、感染が判明したのも実習生らが中心だったはずだ。