過酷な住環境でリスク増大

勤務先の専門学校からAさんには、「1人の留学生がコロナに感染したので、休校にします」という簡単な連絡があっただけだ。アルバイト先でクラスターが起きたことも伝えられていない。自ら留学生たちから情報を集め、数人の感染がわかったのだ。

Aさんと同じ市内に住むベトナム人留学生のダン君(24歳)はこう話す。

「(Aさんの)専門学校の感染者は、ベトナム人やネパール人留学生ら約20人に増えたと聞いています。他の日本語学校でも、10人くらいの留学生が陽性になっている」

化粧品工場などのクラスターが、他の留学生にも広がった可能性がある。事実、留学生が感染すると、実習生にも増して広がりやすい。原因となるのが彼らの住環境だ。

オックさんが通っていた日本語学校の寮では、1部屋に6~7人の留学生が詰め込まれていた。30平米程度の部屋に、2段ベッドを並べてのことである。この学校の留学生を筆者は最近、再度取材してみたが、寮の状況は以前と変わらず、留学生1人から月3万円の寮費が取られていた。

寮の部屋は、近隣の相場では月6万円ほどの物件だ。そこに留学生7人が入居すれば、学校には月20万円以上が入る。こうして寮に多くの留学生を詰め込み、相場をはるかに上回る寮費を取るやり方が、全国各地の日本語学校で横行している。

日本語学校の「ボッタクリ」で被害拡大

実習生の場合、受け入れ先の企業は「1部屋2人以下」の住居を提供する義務がある。しかし留学生の寮にはルールがなく、学校による寮費のボッタクリがまかり通ってしまう。

寮で共同生活をしていれば、バイト先からの感染が広がるリスクは高い。政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会も、「狭い空間での共同生活」がクラスターにつながると2020年10月時点で警告している。

日本語学校などの寮は典型的なケースといえるが、法律で規制がかけられる気配は全くない。学校によっては、ボッタクリまでしているというのにだ。