日本語学校で横行する人権侵害
新型コロナウイルスの感染拡大は、日本で暮らす外国人にも大きな影響を与えた。とりわけ被害を受けたのが、約34万人に上る留学生たちかもしれない。アルバイトを失い、経済的な困窮を強いられている者も少なくない。
ただし、留学生たちが日本で直面する苦難は、何も新型コロナだけが原因ではない。彼らに対する搾取の構造が存在し、酷い人権侵害までも横行しているのだ。
その一例として、筆者が今年初めから取材を続けた日本語学校「A校」で起きた問題について書いてみよう。
A校は留学生に対し、大学や専門学校への進学や就職に必要な「卒業見込み証明書」や「出席・成績証明書」の発行を拒んでいた。「卒業試験」を実施し、「不合格」となった留学生には、希望する進学や就職を認めないというのだ。
日本語学校は卒業しても学位は得られず、従って「卒業試験」を実施する必要などない。にもかかわらず、A校は試験を課した。しかも証明書を出さないために、試験後に合格点まで引き上げていた。理由は「学費稼ぎ」である。
日本人なら問題視されるケースなのに
A校の経営者は、専門学校も運営している。その専門学校に日本語学校の留学生を内部進学させ、学費を稼ぐため、他校への進学などを妨害したのだ。結果、多くの留学生が「内部進学」もしくは「母国へ帰国」という選択肢しかなくなった。
想像してもらいたい。日本人の学生が予備校に入学したとしよう。そして受験が近づいた頃、予備校が突然、受験を認めず、系列の専門学校への内部進学しか許さないと言い出す。そんなことは日本人相手には起きようがない。仮にあっても、学生や保護者たちが一斉に声を上げるだろうし、新聞やテレビもニュースで取り上げ糾弾する。行政も学校に対し、厳しい処分を下すに違いない。だが、留学生に同じことが起きても、世の中には知られず、行政も全くの知らん顔なのだ。