新型コロナウイルスの影響で困窮する外国人留学生の様子を、マスメディアが相次いで取り上げている。その多くは「美談」として報じられているが、ジャーナリストの出井康博氏は「新聞やテレビには、アジア新興国の留学生に触れたくない『不都合な事情』が存在する」という――。
「困窮留学生」がよく取り上げられているが…
新型コロナの影響で苦しむ「困窮留学生」を取り上げる大手メディアが増えている。NHKや朝日新聞は、留学生に対して広がる支援を美談として報じた。
・新型コロナで帰国できず 困窮する外国人留学生に支援広がる|NHKニュース
・失ったバイト、途絶えた仕送り 困窮留学生に広がる支援|朝日新聞デジタル
新型コロナウイルスの感染拡大は、在留外国人の中でとりわけ留学生に影響が及んだ。上記の報道にもあるように、アルバイトを失った留学生も少なくない。そんな彼らを支援する方々には頭が下げる。
ただし、留学生の受け入れ現場を長く取材している筆者には、大手メディアの姿勢には強い違和感を覚える。「美談」を伝えるのは構わないが、「困窮留学生」を生んだ根本的な要因には全く触れていないからだ。
知られたくない「不都合な事情」がある
法務省によれば、留学生の数は2019年6月末時点で33万6847人に達し、安倍晋三政権が誕生した12年末から16万人近く増えている。同政権が「留学生30万人計画」を「成長戦略」に掲げ、留学生の受け入れを増やしてきた結果である。
こうした留学生の急増は、アジア新興国出身者の流入によって巻き起こった。ベトナム人留学生は12年末と比べて9倍以上の8万2266人、ネパール人留学生は約6倍の2万8268人にも膨らんでいる。
一方、NHKが取り上げたコロンビア出身の留学生は、わずか140人しかいない。「困窮留学生」は、ベトナムなどアジア新興国出身者にも大勢いる。にもかかわらず、なぜ「コロンビア人留学生」だったのか。その背景には、アジア新興国出身の留学生に関し、大手メディアが触れたくない「不都合な事情」が存在する。