経済的に困窮する学生に対し、政府が支給を決めた「学生支援緊急給付金」について取り上げた毎日新聞の記事(「勤労学生への差別、切り捨て」給付金支給で留学生だけに求められる成績条件の冷淡|毎日新聞)も同様だ。給付金の支給対象には留学生も含まれるが、その要件に日本人学生には課されない「成績」が加わった。その点に関し、「差別」だと批判しているのである。

確かに、留学生だけに「成績」を要件とするのはおかしい。とはいえ、毎日が文部科学省を批判するのであれば、「差別」のみならず、「留学生30万人計画」の旗振り役を担ってきた同省の政策の是非を問うべきだ。しかし記事は、同計画を「優秀な留学生を多数呼び込む戦略」と評価している。

人権派メディアは「弱者の味方」と呼べるのか

毎日によれば、留学生は「勤労学生」なのだという。この表現に筆者は唖然とした。日本への「留学」のため多額の借金を背負い、来日後は借金返済と学費の支払いを強いられ、日本人の嫌がる底辺労働という「勤労」に明け暮れる現状を、容認しているに等しいからだ。毎日は朝日と並ぶ“人権派”メディアとして知られるが、これで「弱者の味方」と呼べるのか。

毎日が留学生のことを助けたいなら、「留学ビザの発給基準を緩和せよ」と主張すべきである。経済力のない外国人にも無条件で留学ビザが発給されることになれば、留学希望者が斡旋業者に対し、書類の捏造のため多額の手数料を支払う必要もなくなる。

ただし、これほど留学ビザを大盤振る舞いしている国は、先進諸国で日本以外にはない。欧米に留学できる新興国出身者は、「富裕層」もしくは「奨学金を得られる成績優秀者」に限られる。だから「優秀な」留学生を呼び込むこともできる。

彼らは報じられない場所で苦しんでいる

翻って日本はどうか。「留学生」だと称してビザを発給し、日本語学校など教育機関の学費稼ぎのみならず、底辺労働にも都合よく利用してきた。毎日が「優秀な留学生を多数呼び込む政策」と呼ぶ「30万人計画」の裏テーマは、底辺労働者の確保策なのである。その揚げ句、コロナ禍で多くの「困窮留学生」が生まれている。

偽装留学生たちは留学先の日本語学校、また夜勤の肉体労働に就くアルバイト先でも、ほとんど日本人と接する機会がない。もちろん、日本人に尋ねられたところで、自らが“偽装”であることも、また「週28時間以内」を超えて違法就労していることも認めるはずもない。

そんな彼らの存在に目を背け、制度の欺瞞も放置しておきながら、コロナ禍が起きた途端、「困窮」だと報じる大手メディアの姿勢とはいったい何なのか。そもそも本当に「困窮」している留学生は、メディアが報じない場所で苦しんでいる。

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