入管庁は「特定活動」を付与する条件として、卒業証明書の提出を求めている。留学生に対し、今年1月1日以降に日本語学校などを卒業したことを証明させるためだ。しかしA校は、タン君のベトナム帰国を見届けるまで卒業証明書は出さない。つまり、証明書を入管に提示したくても、できない状況なのである。

A校を調査するよう求めたが…

A校で証明書の発行拒否問題が起きていることは、入管もよく分かっている。証明書が発行されず、進学や就職の手続きが取れなくなったA校の留学生たちは、昨年11月に同宇都宮出張所を訪れ、学校側と交渉してくれるよう直訴している。

だが、このとき入管は、A校に対して何もしようとはしなかった。結果、多くの留学生たちが内部進学せざるを得ない状況に追い込まれ、タン君に至ってはベトナムへ帰国することになった。そして今度はビザ変更も認めないというのだ。

「卒業見込み証明書」が発行されず、彼が描いた日本での大学進学の夢は潰えた。そして今度は「卒業証明書」が得られないため、定額給付金の支給対象から外れ、アルバイトもできず、小さなアパートで悶々もんもんとした毎日を強いられている。タン君の日本留学は、“たまたま”入学した日本語学校の横暴によって散々なものになってしまった。

筆者は行政当局に対し、A校で起きた留学生への証明書発行拒否について調査するよう取材を通じて求めた。だが、文部科学省は「栃木県」の所管だと逃げた。そして栃木県に問うと、所管は「入管庁」だとたらい回しする始末だった。

留学生30万人計画という「パンドラの箱」

確かに、入管庁は日本語学校の実質的な監督官庁と言える。日本語学校は入管庁から「告示校」と認められなければ、留学生の受け入れができない。

その基準を示す「日本語教育機関の告示基準解釈指針」には、留学生に対する人権侵害があった場合、日本語学校を告示から抹消するとある。そして具体的な人権侵害行為として、留学生からのパスポートや在留カードの取り上げと並び、「進学や就職のために必要な書類を発行しないなど生徒の進路選択を妨害する行為」を挙げている。まさに今回、A校で起きたことである。

入管庁は筆者の取材に答え、A校を調査する可能性こそ否定しなかった。だが、取材から1カ月以上がたっても、調査が実施された形跡はない。

入管庁が調査に二の足を踏むのには理由がある。A校へ対する調査は、「留学生30万人計画」という「パンドラの箱」を開けてしまいかねないからだ。