借金まみれの留学生が人手不足を埋める実態

勉強そっちのけでバイトに明け暮れる留学生も少なくない。だが、日本語学校に在籍できる最長2年では、借金の返済に追われ、出稼ぎの目的は果たせない。だから彼らは専門学校などに進学してバイトを続けようとする。

そんな留学生をターゲットにして、日本語能力を問わず、学費さえ払えば入学を認める専門学校や大学が増えている。Aさんの勤務先も、そんな学校の1つである。

オックさんの化粧品工場でのアルバイトは、週3回、午前0時から8時までの夜勤だった。同僚は留学生ばかりだ。

工場のラインに並んで立ち、流れてくる商品にラベルを貼り、箱に詰めていく作業を延々と続ける。肉体的にも、精神的にも厳しい作業である。とはいえ、日本語の不自由な留学生ができるアルバイトは、夜勤の単純労働に限られてしまう。

「簡単な作業なので、何か考えていないと眠くなってくるんです。無理して眠らないようにしていると、だんだん頭がおかしくなってくる」

そう語っていた彼女の言葉が、今も鮮明に残っている。

日本人が嫌がる夜勤の送迎バスで感染…

私が追いかけた人材派遣業者の送迎バスは、30人ほどの留学生バイトでいっぱいだった。工場は郊外にあるため、通勤時間は40分ほどかかった。日本語教師のAさんが言う。

「(化粧品工場の)状況はオックさんの頃と同じです。日本人が嫌がる夜勤は今も留学生バイトが担い、通勤には送迎バスが使われている」

防護服を着てバスの中を消毒する人
写真=iStock.com/valentinrussanov
※写真はイメージです

この送迎バスが、クラスターの原因になったようだ。地元紙はこう伝えている。

<感染が確認された12人のうち、11人が派遣会社のバスを利用していて、車内は比較的密接した状況だったうえマスクを着用していない人もいた。>

バスを使っていたのなら、やはり感染したのは留学生だろう。仮にマスクを外して会話に興じていたのであれば、留学生たちは不注意だった。しかし、きつい夜勤の前後に気が緩んだとしても、筆者には彼らを責める気になれない。

新聞では「12人」となっている感染者は、後に30人以上に拡大したことが確認されている。だが、実際の感染者は、もっと膨らんだ可能性がある。