体調悪化にもかかわらず収容を続けた入管…

2021年3月、収容先の名古屋出入国在留管理局(名古屋入管)で、元留学生のスリランカ人女性(当時33)が亡くなった事件が波紋を広げている。体調を悪化させていた女性に面会した支援者が生命の危険を察し、仮放免するよう求めていたにもかかわらず、収容を続けた名古屋入管の姿勢が問題視されてのことだ。

事件は国会でも野党議員が取り上げ、上川陽子法相が答弁に立っている。事件の真相究明を求め、5月1日には女性の遺族もスリランカから来日した。

女性は2017年に留学生として来日し、千葉県内の日本語学校へ入学した。だが、学費が払えず退学となり、在留資格を失った。その後、不法残留が発覚し、2020年8月から入管に収容されていた。

大手紙で最も詳細に事件を報じている東京新聞によれば、女性は「仕送りが途絶えて」(2021年4月7日電子版)学費が払えなくなったのだという。

ただし、本当に仕送りを受けていたかどうかは確かめられていない。また、「母親が家を抵当にローンを組み」(2021年4月16日電子版)留学費用を工面していることからして、当初から女性には留学ビザ取得に十分な経済力がなかった可能性がある。

日本の上陸許可の証印
写真=iStock.com/yuriz
※写真はイメージです

留学生の実態は「借金を背負った低賃金労働者」

私費留学生のビザは、家族が借金を背負うことなく、母国から仕送りを受けられる外国人に限って発給される。留学生には「週28時間以内」のアルバイトが認められてはいるが、バイトなしでも留学生活を送れることがビザ発給の条件なのだ。

しかし、この原則を守っていれば留学生は増えず、政府が国策として推進している「留学生30万人計画」も達成できない。そのため近年は、原則無視で経済力のない外国人にもビザが発給されてきた。彼らを「留学生」として受け入れたうえで、低賃金の労働者として利用する目的からだ。

そんな「30万人計画」の推進役を果たしてきたのが、名古屋入管を統括する法務省出入国在留管理庁(入管庁)である。亡くなったスリランカ人女性も、本来は留学ビザの発給対象にならない外国人であったのかもしれない。だとすれば、単に非人道的な長期収容という問題にとどまらず、入管庁が招いたより根深い悲劇といえる。

事実、これまで私は取材を通じ、アジア新興国から多額の借金を背負い来日した留学生たちの悲劇を数多く目の当たりにしてきた。