完璧でなくても、とりあえず出してみる

日本はこれまで、完璧な「完成型の商品」を多々、世に送り出してきました。だからこそ、「メイドインジャパン=高品質」のブランドイメージを保ってきたのでしょう。

ネッククーラー(Neo)(写真提供=サンコー)

また自動車という商材は、製造ラインでの手直しに相当なコストがかかるため、未完のまま進めていくアジャイル型の開発手法を「ふさわしくない」とする見方もあり、私も一理あると考えます。

ですが日用家電については、必ずしも「完璧でなければ」とは思いません。「発火しない」など最低限の安全性さえ確認できれば、多少不完全であっても「まず出してみる」との姿勢が生きてくるケースもある。

20年4月、第4弾が発売された「ネッククーラー(Neo)」も、その一例でしょう。

コミケ常連社員による大ヒット商品

同商品は、もともと夏場の「コミケ(コミックマーケット)」の常連だった社員による「あったらいいな」から開発された、「首にかけるだけ」の冷却ウェアラブルツールです。

20年、コロナ禍で夏でもマスクをする必要性が生じたこともあり、冷却持続時間を長くできるよう改良。その結果、発売から約1年で累計25万台を売る、同社の売上ナンバー1商品になりました(21年3月末現在)。

アジャイル型の利点は、「開発のスピード」以外にもさまざま。時代の動きを見ながら日々アップデートできるほか、関係者が「β版」に意見を言い、それが商品に反映されることで「自分も開発に関われた」と満足感やワクワク感を得られる点も大きいと言えます。

まさにサンコーの社員やスタッフも、そうしたワクワク感を日々味わっているからこそ、「周りを面白がらせよう」とのモチベーションを保てるのではないでしょうか。

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