数ある食材の中から「山芋」が勧められる理由
気、血ときて、“水”は体を潤す液体(汗や尿、リンパ液など)を表す。尿の出が悪かったり、耳鳴り、めまいが起きやすい人は、利尿作用が高い食べものを取るといいという。再び宗形氏の話。
「ハトムギや小豆、とうもろこし(特にヒゲ)、冬瓜などが水の偏りを直します。一方で便秘がちで口が乾きやすい人は水不足。不足した水を補うものはアスパラガスやいちじく、レモン、キクラゲがいいでしょう」
特別に今、困った症状はないものの養生したいと思うなら、「山芋」がお勧めだ。根本氏が「山芋は漢方薬を構成する生薬『山薬』として使われることが多く、消化酵素などの酵素をたくさん含んでいる」と説明する。
「昔から『ヤマノイモを食べると精がつく』といわれますね。『神農本草経』にも気力を増して体を丈夫にするとあります。すりおろしてとろろにしてたくさん食べれば、滋養強壮や肌荒れによい効果があるでしょう」
薬膳では“味”も体に影響を与える
さて薬膳では「冷え」が気・血・水のめぐりを悪くするという考えがある。
「加齢とともに腎の機能が弱まると体が冷えやすくなります。そういったときはやはり体を温める食材を取ることが必要」と宗形氏。そう薬膳には、体を冷やす食品、温める食品など、熱、温、平、涼、寒の5つの性格がある。
「どんなときも体を温める食材がいいというわけではありません。冷え症の人は温める食材を、熱がこもっているようなときは冷やす食材を選んでいい。基本的にはその時々の自分の感覚を信じてOKです。体を冷やしたくないけれど、冷やす食材を食べたいときは、加熱して温かい状態で食べる、天気のよい昼に食すといった工夫をしてください」(宗形氏)
薬膳では“味”も体に影響を与えるという。
「『酸っぱいもの』は筋肉を引き締め、汗や尿の出すぎを止める。『苦いもの』は余分な熱や水分を除き、乾燥を止める。『辛いもの』は滞っているものを発散し、気血をめぐらせ、『塩からいもの』は固まりを柔らかくし、便通を整える。『甘いもの』は滋養強壮や痛み止め、毒消しの作用があります」(同)
体質や現在の環境、その日の天候などによって、今の自分にベストな食材は刻々と変わっていく。気・血・水のうち、あなたはどこに滞りが起きやすいだろうか。また、今の自分はどこか不足しているところはないだろうかと、一度自分の体に問いかけてほしい。