いまだに圧倒的な影響力を誇る「全国郵便局長会」

日本郵政は、民営化を実現したにもかかわらず、官営だった時代の体質を色濃く残している。その原因のひとつとされているのが全国郵便局長会の存在である。全国郵便局長会は、民営化以前に特定郵便局だった郵便局の局長で構成される団体で、かつては全国特定郵便局長会(全特)という名称だった(全特の呼称は今でも使われている)。

日本の郵便制度は明治時代に整備されたが、明治政府には十分な資金がなく、全国、津々浦々に郵便局を設置する経済的余力がなかった。このため地域の名士などに土地や建物を提供してもらい、郵便業務の取り扱いを委託する形で郵便局網を整備したという経緯があり、これが特定郵便局の前身である。

2万4000カ所ある郵便局のうち4分の3が特定郵便局をルーツとしているので、郵便局の大半がこれに該当することになる。

特定郵便局長は地方の地域の名士が多かったということもあり、地域社会に絶大な影響力を行使してきた。全特は事実上、自民党の集票マシーンとして機能しており、2013年の参院選では全特出身の候補が43万もの票を獲得。比例代表でトップ当選を果たし、組織力の強さを見せつけた。全特は日本郵政の経営にも大きな影響を及ぼしており、2016年には全特出身者が日本郵便の役員に就任している。

全特から経営陣を出すことについては、全特が経営陣に取り込まれるとの危惧が内部から出たとも言われるが、外部から見れば、全特の意向が日本郵政の経営に強く反映されているように見える。その後、全特出身者は役員には就任していないが、大きな影響力を行使できる存在であることは間違いない。

実際、郵便局に課された厳しい販売ノルマを達成するためには、全特の力を借りなければ実現できないとも言われており、日本郵政の経営陣と全特はまさに持ちつ持たれつの関係になっている。

事実上の世襲も認められてきた特定郵便局長

では、全特はその絶大な政治力を駆使して何を実現しようとしているのだろうか。もっとも大きいのは全国に張り巡らされた郵便局網の維持だろう。

各地の郵便局について、宅配サービス拠点として見た場合でも、金融機関の支店として見た場合でも、その数は過大である。つまり、これほど多くの郵便局が維持されているのは、ユニバーサルサービス維持のためであり、こうした理由から、特に官営時代においてはコストは度外視されてきた。

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だが今の日本郵政は民営化された営利企業であり、しかも市場に上場し、投資家からか資金を集めている。持続的な利益成長が求められるのは当然であり、郵便局網の再編はそのひとつの方策となり得る。

一方、特定郵便局長は公務員という立場ではあるが、ある種の自営業者でもあり、事実上の世襲が認められてきた(公務員なので、形式的には世襲という形にはなっていない)。当然のことながら、これは特定郵便局を経営する人にとっては大きな利権であり、何としても維持したいと考えるはずだ。