3月12日、楽天が第三者割当増資で2423億円を調達すると発表した。このうち日本郵政が8.32%にあたる約1500億円を出資し、楽天の4位株主になる。経済評論家の加谷珪一氏は「両者の提携は、成功する可能性が高い。日本郵政は経営の合理化が進んでおらず、それが楽天にとっては大きなメリットになる」という――。
資本提携で合意し、ボード越しにこぶしを合わせる日本郵政の増田寛也社長(右)と楽天の三木谷浩史会長兼社長=2021年3月12日、東京・大手町
写真=時事通信フォト
資本提携で合意し、ボード越しにこぶしを合わせる日本郵政の増田寛也社長(右)と楽天の三木谷浩史会長兼社長=2021年3月12日、東京・大手町

日本郵政と資本提携を行った楽天の狙い

楽天は2021年3月21日、第三者割当増資を行い、日本郵政などから約2400億円を調達すると発表した。

楽天は携帯電話事業に新規参入しており、今後も継続的に巨額投資を実施する必要がある。同社はかつて盤石の財務体質を誇っていたが、直近の自己資本比率は5%まで低下しており、財務基盤の強化が求められていた。今回の資本提携によって、継続的な投資にある程度の道筋を付けたことになる。

同社にとって今回の資本提携には、物流インフラの強化という目的もある。

楽天はECサイトの出店者から出店料を徴収するビジネスモデルであり、基本的に商品の配送は出店者に任せてきた。一方、ライバルのアマゾンは自ら商品を販売しており、時間をかけて自前の物流インフラを構築し、サービスの強化を図っている。

当初は重い先行投資が必要ない分、楽天が有利に事業を展開したが、ネット通販が社会に広く普及し、利用者が求めるサービス水準が高まるにつれて、物流網を自社で管理するアマゾンと楽天のサービス格差が拡大してきた。

楽天は、一時、独自の物流網の構築を試みたものの、あまりうまくいっているとはいえず、アマゾンとの差は縮まっていない。今回、日本郵政と本格的に提携することで、配送センターの共同構築などを通じて、物流システムを高度化できる可能性が見えてきた。

それでは日本郵政にとって、今回の提携にはどんなメリットがあるのだろうか。もっとも大きいのは、低収益に苦しむ事業子会社である日本郵便のテコ入れだろう。