収益性も低く海外展開にも失敗

日本郵政は2007年に民営化され、8年後の2015年に株式の上場を果たした。だが民営化後のグループ経営はあまりうまくいっていない。このところの世界的な株高で、多少、値を戻したが、上場以降、基本的に同社の株価は下落を続けている。買収した豪州物流企業の業績悪化によって4000億円の損失を計上するなど、期待された海外展開も頓挫している。

資本構成もいびつだ。グループ内には、日本郵便、かんぽ生命保険、ゆうちょ銀行という事業会社があり、日本郵政はその持ち株会社となっているが、かんぽ生命、ゆうちょ銀行が独自に上場し、持株会社とは親子上場の関係になっている。

先進諸外国では利益相反を避けるため基本的に親子上場は許容されないケースがほとんどであり、本来なら日本郵政グループも3社に分割した上で、それぞれが上場すればよい話である。

だが、そうなっていないのは、民営化したとはいえ、ユニバーサルサービス(地域によって格差のない公平なサービス提供)が義務付けられた日本郵便の収益制が低いという特殊事情があるからだ。

日本郵政が非効率な経営をしているからこそ、楽天にメリットがある

日本郵便は全国で約2万4000カ所の郵便局を運営しているが、郵便事業は近年、急速に縮小している。ゆうパックなどの宅配事業は拡大しているものの、ヤマト、佐川との差は依然として大きい。

日本郵便は、金融商品の販売といった付帯事業を加えることで何とか業績を維持してきたが、2019年にはかんぽ生命が提供する保険商品の不正販売問題が表面化した。強引な商品販売を行った背景には、何としても手数料収入を確保したいという同社の焦りがあったと考えられる。

2016年5月28日、新宿区の郵便局
写真=iStock.com/winhorse
※写真はイメージです

今回、楽天との提携によって、宅配の取扱量が増えるのは確実であり、加えて各地の郵便局には楽天モバイルの販売カウンターが設置される。これは郵便局がドコモショップやauショップに早変わりするようなものであり、楽天にとっては携帯電話サービスのシェア拡大が、日本郵政にとっては手数料収入の拡大が期待できる。

このように、楽天と日本郵政の資本提携には相互にメリットがあるが、一方で微妙な関係ともいえる。その理由は、日本郵政の経営合理化が進まず、全国に多数の郵便局を維持していることが、皮肉にも楽天にとって大きな魅力となっているからである。

もし日本郵政の経営合理化が進み、郵便局が再編されたり、宅配事業における単独での収益拡大に成功すれば、楽天にとって日本郵政はあまり魅力的な存在ではなくなり、同時に日本郵政にとっても楽天との一体化は足かせになる可能性もある。

だが筆者は、当分の間、楽天と日本郵政のシナジー効果は続くと見ている。その理由は、現時点において日本郵政の経営合理化が実現する可能性は極めて低いからである。