感染の3要素に照らし合わせて考える
新型コロナウイルスによる感染が成立する仕組みは、次の3つの要素がそろった時である。逆に、この3要素のうち1つでも取り除くことができると感染症は起きない。
①感染力のある新型コロナウイルスが存在する(感染源がある)
②新型コロナウイルスが体内に入る経路がある(感染経路がある)
③体に抵抗力がない(新型コロナウイルスに対する抗体などの免疫機能が不十分でない)
この3つの要素がすべてそろわなければ感染は起きないため、1つ以上の要因をコントロールして取り除くことこそが感染対策の基本となる。
手洗いは、ウイルスを物理的に除去して要素①のウイルスの存在を取り除く。
顔を触らないようにするということは、要素②のウイルスを口や鼻へ運ばないということにつながる。
正しいマスクの着用は、ウイルスの感染経路遮断に効果を示す(要素②)。また、自分が感染している時には、相手のために、ウイルスを存在させない(拡散させない)ようにすることができる(要素①)。ウイルスが侵入したとしても、呼吸器の保湿・保温によってウイルスが感染しにくい状況を作る(要素③)。
ワクチン接種は、ウイルスの抗体を体に作らせ、免疫応答によって感染を防ぐことで、要素③を取り除く。無症状の感染者は、要素③を自らの免疫力で取り除いていることになる。
このように、感染対策には、この3つの要素がそろわないようにすることを意識して行動することが基本となる。
1つだけの対策に頼ってしまうと、それが破綻したときに感染が起きる
これまでは、ソーシャルディスタンシングやマスクで要素①と要素②をなんとかコントロールしようとするしかできなかった状況の中で、ワクチンの開発によって積極的に要素③をコントロールすることができるようになった点が、目覚ましい前進であると言える。
そうとはいえ、ワクチン接種も感染成立の3要素のひとつを取り除く手段にすぎない。限られたカードの中で、1つだけの対策に頼ってしまうと、その1つがたまたま破綻したときに感染が起きてしまうのである。感染症流行期には、複数の対策を行う手を緩めるという選択肢はない。
感染者が訪れる医療現場では、要素①をコントロールしにくく、ウイルスが存在する可能性が高いため、感染リスクの高い環境となる。なるべく、エリア分け(要素①)や防じんマスクによる経路遮断(要素②)でコントロールを試みるが、医療関係者の感染者が依然として減らない現状がある。そのため、いち早く、要素③を取り除くように、医療従事者へのワクチン接種が最初に優先されるということが理解できる。
今後、集団免疫が確立すれば、要素③が常に取り除かれている状況となる。そうなれば、要素①と要素②を意識しない普段通りの生活をしながらでも、感染症が成立することはないと言える。