「グレーゾーン事態」では米軍は介入しない
中国が狙うであろう「グレーゾーン事態」とは、武力攻撃とは認められないが、平時よりも緊張を高めるあいまい(グレー)な侵害行為だ。武力攻撃は「国家の意思に基づく組織的、計画的な武力の行使」(内閣法制局)と定義され、これに至らない場合、自衛隊は反撃のために武力を行使することはできず、日米が共同で対処することを規定した日米安全保障条約5条の対象にもならない。
日本の歴代首相は海保と海自の能力を信用していないのか、尖閣諸島が日米安全保障条約第5条の適用対象であることをアメリカ側とくりかえし確認してきた。菅直人政権では前原誠司外相が2010年にクリントン国務長官と、安倍晋三首相は2014年にオバマ大統領、2017年にトランプ大統領と、菅義偉首相は2020年にバイデン大統領と、政権が変わるたびに議題に上げ、その旨を明言している。
中国の目的は日本のミサイル配備阻止
しかし、中国の目的は、日本が魚釣島にレーダーや地対艦・地対空ミサイルを配備することの阻止にあると思われ、恒久的に占領することではない。
現在自衛隊に配備されている地対艦ミサイルの射程は約200キロメートル、地対空ミサイルは約60キロメートルとなっている。今後、自衛隊のミサイルの射程距離は大幅に延伸することが計画されており、中国にとって大きな脅威となる。このため、魚釣島奪還のため水陸機動団が九州へ撤収した後、再び海上民兵は上陸を試みるだろう。
日本の現在の法制度では、グレーゾーン事態に海保や警察で対処しきれない場合、政府が自衛隊に対して「海上警備行動」や「治安出動」を閣議決定して自衛隊に対処させるとしている。
しかし、中国側はグレーゾーン事態を維持するため、中国海軍艦艇は尖閣諸島の領海には入らず、領海の外側の接続水域のさらに外側で海自護衛艦の動きを妨害する。接続海域に入り海上民兵を支援するのは海警局船舶となる。中国側はあくまでも軍事行動を制限し、武力攻撃に発展しないようにするだろう。