「米中貿易戦争」のあおりで受注が殺到

コロナショックの発生によって、TSMCをはじめ台湾半導体産業が世界経済に与える影響の大きさは一段と鮮明だ。感染拡大によってテレワークが増え、巣ごもり需要のためのゲーム機やデジタル家電需要も高まった。一時生産が落ち込んだ自動車のペントアップディマンドも発現し、世界全体でより多くの半導体が必要とされている。世界の半導体生産がTSMCなどに集中し、需給は逼迫している。

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世界的な半導体の需給逼迫には、米国のトランプ前政権の政策も影響を与えた。トランプ政権は、半導体に関する米国のソフトウェアや製造技術が中国に渡らないようにするために、中国のファウンドリー大手である中芯国際集成電路製造(SMIC)に制裁を科した。その結果、TSMCにより多くの生産委託が舞い込んだ。

以上をまとめると、コロナショックの発生によって世界経済の成長に半導体が無視できない影響を与えることが、これまで以上に明確になった。その結果、世界経済への半導体の供給者としてのTSMCの重要性は一段と高まっている。

TSMCが求める“メイドインジャパン”の部材

そうした変化はわが国の企業にとって重要だ。ポイントは、TSMCをはじめ世界の半導体産業にとって、わが国企業の技術が不可欠であることだ。

シリコンウエハー(半導体の基板)やフォトレジスト(感光剤)、エポキシ樹脂(半導体封止材)、コンデンサ、半導体製造装置、および生産設備の効率的な運営を支える動作制御装置や工作機械の分野で、わが国企業の競争力は高い。1990年代以降、メモリやロジック半導体に関して、わが国企業のシェアは低下した。

しかし、半導体の生産に必要な部材や機器に関して、わが国は世界から必要とされている。半導体需要の高まりに押され、旧型の半導体製造装置の生産を増やす本邦企業もある。微細さ、高純度、精緻なすり合わせに関する企業の製造技術は、わが国経済の宝だ。

TSMCが、わが国に3次元の集積回路に必要な材料の研究開発拠点を設けることを決定したのにはそうした技術を取り入れる狙いがある。TSMCは自社が生産したメモリや演算装置を3次元に積層することによって、より小型、より高性能、より省エネなプロセッサを生み出したい。そのために、わが国の部材メーカーとの連携が重視されている。