日本企業との連携を重視する背景
それによってTSMCは半導体製造面での総合的な力を引き上げ、アップルをはじめとする顧客企業の要望により迅速かつ的確に対応する事業体制を整えたい。2022年にTSMCは回路線幅3ナノメートルの半導体の量産を開始する予定だ。それに加えて、TSMCは先端のパッケージング技術(パッケージとは複数のチップを接続した上で樹脂などで包み、外部との回路接続や放熱を実現すること)を強化するために、わが国企業の技術に注目している。
TSMCがわが国企業との連携を重視する背景には、中国半導体産業への危機感もある。中国政府は、産業補助金政策などを進めて半導体産業の育成に取り組んでいる。2030年には世界の半導体生産シェアで中国が台湾を追い抜くとの予測がある。すでに、韓国勢はメモリ半導体やディスプレイ分野で中国企業に追い上げられている。中国勢の追い上げに対応するために、TSMCはわが国企業との連携をより重視する可能性がある。
脱中国で「日米台」の連携がより進む
米国では、バイデン政権が半導体をはじめとする4つの戦略物資に関して、透明かつ安定したサプライチェーンを整備し、中国への依存を減らそうとしている。2月24日にバイデン氏は大統領令を出し、経済成長と安全保障の観点から供給網の問題を洗い出し、その対応策をまとめるよう国家安全保障問題担当の大統領補佐官らに指示した。
そうした取り組みを進めるにあたり、バイデン政権は台湾との関係を重視している。それによって米国は、安定した半導体の調達を実現したい。また、米国は、同盟国であるわが国との関係も重視している。つまり、世界の半導体産業において、日米台の連携は強化され、それを軸とする半導体のサプライチェーンが整備されようとしている。
他方で、バイデン政権は基本的には中国に対して強い姿勢で臨み、産業補助金や海外企業に対する技術の強制移転を止めるよう求めるだろう。その点に関して、トランプ前大統領が中国に課した制裁関税がどのように扱われていくかは重要だ。なぜなら、制裁関税は米国の対中強硬姿勢を象徴する政策だからだ。