「飽き性」は変化に適応するための強みになる
【寿司リーマン】(以下、寿司)73歳の今もなお、時代の変化とともにご自身のスタイルを変え続けられる適応力がすごいなと感じます。何か意識されていることはありますか?
【堀川大将】(以下、大将)基本的に飽き性なんですよ。新しいものが好き。これが僕の強みなんです。
【寿司】毎日毎日同じ仕事を繰り返し続けることが寿司職人の美学、みたいなところがあるじゃないですか? しかも超ベテラン寿司職人って、頑固なイメージがあるから……(笑)。
【大将】昔から目新しいものを面白いと感じる性格。寿司屋が握りしかなかった時代に、アナゴの肝やヒラメの皮を炙ったものをおつまみとして居酒屋スタイルで提供してみたりもした。時代とともにお客さんのニーズも変わるんです。例えばバブル時代の寿司屋なんてのは、喫茶店代わりに使われていてね。みんなお金を使いたくて仕方なくて、高けりゃなんでもいいっていう時代だった。
【寿司】そんな時代もあったんですね。寿司屋の醍醐味って、大将とお客さんがカウンターを通して直接触れ合えることだと思うんです。料理人であり、サービスマンであり、経営者でもある。常にお客さんの表情や声を現場で感じ取り、変えていける。新しいものへのアンテナはどのように張っているのですか?
【大将】若い子の意見を聴くことかな。noteなどのSNSを始めてみたのも、アルバイトの女子大生の子に教えてもらったんだよ。寿司屋はひとりではできないし、若いスタッフの子たちとの距離を縮めるために、上司として彼女たちとの会話についていけるようにしないとね(笑)。
【寿司】ステキですね。若い世代からしても、そうやって自分のことを知ろうとしてくれる上司についていきたいですもん(笑)。堀川さんのお店の空気感が素晴らしいのはそうしたところから来ているんですね!
名物「フルーツ寿司」もお客さんとの会話がきっかけで生まれた
【大将】寿司リーマンさんが絶賛してくれたフルーツ寿司も、若い女の子のお客さんのふとした一声がきっかけだった。デザートでフルーツを切ってお皿に盛り付けて提供しようとしたら、「え、これは握らないんですか?」って言われたの。こちらもびっくりしたんだけど、「面白いかも」と思って握ってみたら、これが意外にイケるぞ! と。今ではウチのスペシャリテのひとつになりました。
【寿司】飽き性、というとネガティブなイメージもありますが、新しいものが好きで、まずやってみる性格、と言い換えるとポジティブですよね。そして、その新しいものへのアンテナは、若い世代の意見に素直に耳を傾けることで感度が高まる。そうした柔軟性が、堀川さんの強みですね。