リモートワーク下ではZoomを使った「オンライン坐禅」も活況

Google以外でも、坐禅は欧米の経営者と親和性が強い。アップルの創設者スティーブ・ジョブズと禅との関係は有名な話だ。ジョブズはサンフランシスコの禅センターに通い、曹洞宗の僧、乙川弘文に師事。坐禅や禅の理念を、多くの製品や経営手法に生かした。たとえば、iPhoneなどのシンプルなデザインや直感的な操作性は、禅語の「以心伝心(真理は文字や言葉ではなく、心で伝えていくもの)」に影響を受けた、ともいわれている。

横浜の大手公認会計士事務所、若杉公認会計士事務所もフライングモンクに参加している(写真提供=フライングモンク)

Googleでの出張坐禅の評判は上々だった。だが、折しもコロナ禍がやってきて、リアルな現場で坐禅会を開くことが難しくなった。企業がリモートワークへとシフトするなか、岩山さんはそれを逆手に取った新たなサービス「オンライン坐禅」を立ち上げる。

Zoomなどのオンライン会議システムを使えば、場所を問わずにどこでも坐禅ができる。岩山さんは、椅子に座ったままでも可能な坐禅プログラムを考案した。オンライン坐禅は、1回あたりおよそ30分。坐禅が終わると、「ビジネスに活かせる仏教の教え」をテーマにした法話をしてくれる。

 

途中参加や途中退出が自由、場所や人数を問わない手軽さ

リアルな坐禅会で味わえる、お堂の荘厳な雰囲気に浸ったり、警策で打たれたりすることはオンラインでは難しいが、逆にオンラインならではの利点もある。

途中参加や途中退出が、気兼ねなくできるなどの手軽さ。また、場所や人数を問わないので、海外のオフィスでも同時開催が可能となる。その時に参加できなかった人には、後日録画したものを送ることができる。

写真提供=フライングモンク
岩山さんは願修寺の一室でオンライン坐禅を届けている

大手印刷会社の凸版印刷では2020年夏、フライングモンクのオンライン坐禅を取り入れた。始業前の30分間、オフィスや自宅など、おのおのの仕事場から参加した。

コロナ禍だからこそ、法話も心にしみる。岩山さんと一緒にフライングモンクに参画している宝泉寺(小田原市)の副住職、原宗久さん(36)は「即今只今」という禅語を使って、凸版印刷社員にこう説いた。

「即今も只今も、『たった今、現在』という意味です。コロナ禍ではありますが、不安やしがらみに囚われず、いま、目の前にあること、いまここにいる自分に集中してください。例えば、仕事に着手しようとする際、何かモヤモヤしていて着手できなくても、いざ、仕事をスタートして、集中すれば意外とはかどった、という経験があるでしょう。まさに、それが坐禅の境地なのです。坐禅は、自分自身にひたすらに向き合うことを目的とします。心がモヤモヤしている時には、30秒でも1分でもいい。姿勢を正して、呼吸を落ち着かせる訓練をしてみてください。きっと仕事にも活かせるはずです」