92歳になった祖母は認知症のひとつ「ピック病」と診断された

2017年9月。入院の日の前日、祖母は「入院したら、しばらくお風呂に入れへんから」と1人で入浴。訪問美容師に来てもらい、髪もカットした。

しかし当日、玄関を出た瞬間、「もうこの家には帰ってこれへんのかなぁ?」と祖母は号泣。自分を育ててくれた親同然の祖母を見捨てるようなことはしない。そういう気持ちでいた雨宮さんは「絶対に連れて帰るからな!」と言って肩を抱いたが、傍らにいた伯母は、「まだそんなこと言ってるわ」と呆れたようにつぶやいた。

写真=iStock.com/banabana-san
※写真はイメージです

入院生活が始まると、祖母は物忘れが酷くなり、おかしなことを言う頻度が増えていった。

入院1カ月後、雨宮さんは、以前から祖母に認知症検査を受させたいと思っていたため、入院中に検査ができないかと相談員に話をしたところ、提携している心療内科医が認知症検査をしてくれることになった。

検査の結果、ピック病と診断される。

ピック病は、前頭側頭型認知症のひとつとして分類され、アルツハイマーと異なり、記憶は比較的保たれている。症状としては、「情緒障害」「人格障害」「自制力低下」「異常行動」「対人的態度の変化」「滞続症状」などがあり、特に、これまで温和だった人が突然怒りっぽくなるなど、人格に大きな変化が見られることが多い。人格障害の症状の強さは、「ピック病>アルツハイマー病>脳血管性認知症」といわれる。

アルツハイマーに対しては、進行を遅らせる薬の開発が進んでいるが、ピック病に関しては、有効な薬はまだ開発されていない。落ち着きのなさなどの精神症状に対し、対症療法として抗精神病薬を使用したり、精神病院への入院が検討されたりする。

深夜に病院から電話「お祖母さんが暴れているので来てください!」

雨宮さんの祖母も、抗精神病薬の服薬が開始された。

入院2カ月後のある深夜、病院から「お祖母さんが暴れているので来てください!」という電話が雨宮さんのスマートフォンにかかってきた。伯母とともに向かうと、祖母の病室の廊下には物が散乱しており、祖母は施錠された部屋に閉じ込められていた。中からは、祖母の叫び声と、バン! バン! と壁を叩く音が響き渡る。

雨宮さんは愕然とした。

「この日以降、担当の心療内科医は、さらに強い薬を大量に出すようになりました。ほとんど祖母は眠らされ、起きているときは意識朦朧。話をしようにも呂律が回らず、ご飯も座って食べられない。全く歩けなくなり、完全オムツに。私は、祖母に認知症検査を受けさせたことを後悔しました……」

入院は、完全に裏目に出てしまったのだった。

(以下、後編へ続く

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