ネットで検索せず、もっと自分の第一印象を大切にするべき
【東】だから、いまみたいにみんなが「Netflixは」とか「興行収入が」みたいなことばっかり言ってる世界はなんだろうなっていう気はするんですよね。吉田さんも同じ世代だからわかると思うけど、そういう意味ではぼくは古いタイプのオタクなんです。たとえばぼくは押井守が好きだったんだけど、中学校2年生ぐらいで「うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー」に衝撃を受けてから、押井守の話をじっくりできる仲間と出会うまでに10年ぐらいかかってると思うんですよ。
ところがいまはどんなマイナーな監督やクリエーターに出会っても、すぐ検索してすぐ仲間が見つかり、「あれ、俺の感じた衝撃と違ったのかな?」と考えてすぐ軌道修正しちゃうわけですよ。でも、昔はそこで時間稼ぎができた。インターネットがなかったんで、ずっと自分なりに考えることができたわけですよね。「俺にとっての押井とはなんだろう?」みたいな。俺の押井論みたいな。
そういうのはたいがい勘違いなわけですが、でも、そういうことを考える時間が必要だと思うんですよね。そういう勘違いが多様性を作る。いまはそれがなくなっちゃって、そこは若い人たちは気の毒だなと思うんですよね。
——どうしても見方が一定になっちゃいますよね。
【東】うん。自分の軸が固まる前に検索して調整しちゃう。だからこの作品はすごいと思っても、検索すると「たいしたことない」「前作に比べるとずいぶん落ちた」みたいなことばっかり出てくると、「あ、そういうもんなのか」って思っちゃう。あれは気の毒だと思う。もっと自分の第一印象を大切にするべきなんですよね。