アイスランドはその後、IMFから一定の支援は受けたものの、基本的には自力で経済と財政の立て直すことを余儀なくされた。国民が政府に納める、ありとあらゆる税や手数料が5割増し、2倍、といった水準に引き上げられた(図表4)。日本と同じ島国でありながら、そうした重税に耐えかね、全人口の実に2~3%が国外に流出したとみられている。これは日本に置き換えれば、大阪市と広島市の人口がまるごと国内から消えるようなレベルの事態に相当する。

金融とは、つくづく恐ろしいものだ。好況に浮かれて過剰なリスクを抱え込んでしまうと、ひとたび情勢が変化したとき、あっという間に一国の経済や社会秩序を崩壊させてしまう。アイスランドでは2010年1月に金融危機の元凶のひとつとされるネット専業銀行Icesaveの頭取宅が“焼き討ち”にあっている。2012年4月には、危機時の首相だったホルデ氏が、危機を招来した過失を問われ、有罪判決を下されてもいる。

そして、アイスランドが、国民の重い負担によって財政運営を改善し、何とかこの資本移動規制を解除できたのは2017年3月、実に8年4カ月後のことだった。