日本は世界最悪の財政状況だが、MMTの影響で債務を増やし続けている。日本総合研究所の河村小百合主席研究員は「財政破綻したギリシャでは2年ほど預金引き出しが週5万円程度に規制された。もし日本が財政破綻すれば、規制はもっと長引く恐れがある」という――。

※本稿は、河村小百合『中央銀行の危険な賭け 異次元緩和と日本の行方』(朝陽会)の一部に加筆・再編集したものです。

日本銀行による「財政ファイナンス」の行き着く先は、円に対する信認の喪失と大幅な円安となる可能性が高い
写真=iStock.com/bopav
日本銀行による「財政ファイナンス」の行き着く先は、円に対する信認の喪失と大幅な円安となる可能性が高い

国債買い入れの上限の「めど」までも撤廃

去る12月21日(月)に決定した、わが国の2021(令和3)年度一般会計予算政府案の規模は106兆6097億円と、またしても史上最大規模を更新した。

いかにコロナ危機下とはいえ、膨らむ一方の歳出に対して、そのコストは国民のうちの誰がいつどういう税の形で納めて負担するのか、という議論には全く手付かずのままで、歳出の積み増しはすべて国債の増発で賄う格好となっている。にもかかわらず、国内ではおよそ危機感に乏しいのが実態だろう。

すでに財政は“世界最悪”の状態にあるわが国で、それでもなお、こうした政策運営を延々と続けることができているのはなぜか。それはひとえに、黒田総裁率いる日銀がすでに7年以上の長期にわたり、「量的・質的金融緩和」という“事実上の財政ファイナンス”を継続していることによる。

コロナ危機下にあった本年4月に日銀は、従前設けていた「年間80兆円」という国債買い入れの上限の「めど」までも撤廃してしまった。これほどまでの“放漫財政”が行われていても、わが国においては今に至るまで「国債暴落、金利急上昇」という事態は起こってはおらず、平穏そのものだ。

ではわが国がこのまま、財政再建にも、金融政策の正常化にもおよそ取り組まずに突き進んでいった場合、一体何が起こるのか。