「正直言って怖い。でも、いま声をあげなければ」
朝日社説のこの指摘は納得できる。香港の一国二制度を堅持してきたのが、香港独自の司法だ。中国本土では中国共産党が司法も規制するが、香港では判例を重視する英国式の司法が維持されてきた。
しかし、香港政府側が敗訴するたびに中国・香港政府は「司法が肥大化している」として締め付けを強めている。そうした流れのなかで、周庭氏ら民主活動家の3人への実刑判決が言い渡された。
朝日社説は「日本や欧米各国の政府は強い懸念をくり返し表明している。中国は反発を強めているが、それによって圧力を弱めるようなことがあってはならない。かつて植民地統治をしていた英国を筆頭に、国際社会は共同行動を強めるべきだ」と主張し、最後にこう指摘している。
「『正直言って怖い。でも、いま声をあげなければ、もうあげられなくなるかもしれないんです』。昨年6月に日本を訪れた際、周氏は独学で学んだ日本語で必死に訴えていた」
「香港の若者が日本に向けて放った言葉の重み。それをいま、改めてかみしめたい」
周庭氏のこの言葉は日本の若者たちにもSNSなどを通じて届いている。今後はSNSの枠を飛び越えて、国際社会での議論に結びつける必要があるだろう。
産経社説は「弾圧」「釈放」と朝日社説より強く具体的に主張
産経新聞も12月3日付の社説(主張)に「香港で周氏ら実刑 日本政府は釈放を求めよ」という見出しを付け、こう訴えている。
「この裁判は香港の自由と民主を損なう弾圧だ。判決は不当で認められるものではない。香港当局は3氏を釈放し、自由を保障すべきである」
「弾圧だ」「不当で認められない」「釈放して自由を保障」と朝日社説に比べ、強い言葉を使って具体的に主張している。かつて中国政府に「肩入れ」したことのある朝日社説とは違う。
産経社説はさらに主張する。
「香港での弾圧は習近平政権の方針に基づく。香港の民主の芽を摘もうと国家安全法を施行し、北京の出先機関である『香港連絡弁公室』や『国家安全維持公署』は強権政治を広げようと動いている。国際公約である『一国二制度』や『港人治港(香港市民による香港統治)』は有名無実化しており、強い懸念を覚える」
その通りだ。世界中の民主主義の国々が強く心配し、批判の声明を出している。