性別や性の在り方を勝手に決めつけない

遠藤さんは、性がタブーになっているのは子どもたちの間でも同じだと指摘する。

「自分がLGBTであるとか、そうかもしれないということは、学校や家の中で子どもたちはオープンにしゃべれません。ですが、“にじーず”に来ると、話しても『ああ、そうなんだ』という具合に別に驚かれたりしない。子どもたちにとって安全な場所にするために“性別や性の在り方を他の人が勝手に決めつけない”というルールがあるからです」

2人に共通しているのが、10~20代を対象にしていること。アイデンティティの向き合い方が難しいこの年齢の若者たちと関わるとき、二人はどんなことを大切にしているのだろうか。

「その子の感じていることが、どうやったら尊重されるのかなということはいつも考えています。自分の考えていることや、何がイヤで何が好き、自分はどうしたいのかといったことを言語化するのはけっこう難しいんです。自分でやってみて、友だちのリアクションを見てわかることもある。すぐには答えが出ないことだから、その子なりに探るというペースを大切にしたいですね。

来てくれた子たちの感想で興味深いのが、『同年代でもさまざまな人がいることを目の当たりにしたことで、自分がどんな人間なのかを決定する必要はないと教えられた』というものです。にじーずに来たら、自分が同性愛なのかバイセクシャルなのかなどを決めなきゃいけないと思っている子が結構いるんです。でも参加しているうちに、決めても決めなくてもいいし、どの道自分は自分なんだということがわかってくるわけです」(遠藤さん)

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わからないことは大人がアドバイスするのではなく、「あの子に聞いてみたら」と子どもたち同士のコミュニケーションで解決できるのがいちばんいい、と遠藤さんは力を込める。

母親がコンドームを見つけて激怒

中島さんが大切にしているのは「いつでも来ていいよ」ということ。

「悩んでいるのは、あなただけじゃないし、性の知識が得られるところや性の相談ができるところ、頼れるところはいっぱいあるということを伝えたいですね」

そして、自分の性とアイデンティティについて、中島さんは改めて自身の経験について話してくれた。

「私自身、高校生のときに自分の使っていたコンドームを母親に見られて、めちゃくちゃ怒られたことがあって、それをいまだに引きずっているんです。そのときに、もし母親が『私がいるから、もし何かイヤなことがあったら、いつでも相談してね』と言ってくれたり、改めて性について話し合う機会を設けてくれたりしたら、そこで私も性に対する印象が変わったし、これほど引きずることもなかっただろうと思います。常日頃から性について話し合う必要はないけれど、いざとなったら相談できる人なんだよということを大切な人に伝えるのは大事かなと思って、自分でも実践しています」

コンドームは自分の体を守るための選択肢として使っているもの。だから怒らないでほしかったという。