ただ、アウトドア用品のメーカーは、主に男性向けの機能的な商品を作るのに慣れているため、女性向けのアパレル・メーカーが作るようなファッション性を一般に持ち合わせていなかった。それゆえ、ファッション・アイテム作りの重要性を認識しながらも、自然に機能性を重視した商品になってしまったのだ。そのような好ましくない状況を打破し、顧客のニーズに接近するために昨今、ユニークな取り組みが見られる。

デサントは、アウトドアスタイル・クリエーターの四角友里氏とコラボレーションし、利用者目線の商品開発を行っている。発端は、09年9月に北アルプスの涸からさわ沢での山岳イベント。そこで偶然に下平氏が「山スカート研究家」を名乗る四角氏と出会い、「一緒にスカートを作りましょう」という話になったという。

四角氏はさすが研究家を名乗るだけのことはあって、7年も前からアウトドア用のスカートを世界中から買い集め、40~50着ぐらい山で使えるスカートを試し、自ら手直ししていた。デサントでは幾度も彼女とミーティングを重ね、彼女の「ああしたらいい、こうしたらいい」という知見やアイデアを取り入れた試作品を練り上げていった。

試し売りの500枚が1カ月で完売

同社では、積極的にフィールドテストを行っている。試作品を実際に四角氏に着用してもらって、着用感がどうだったか、不具合がないか、足さばきがしやすいか等をチェックしてもらっている。

また、社内の女性にもはいてもらって、その使用感やデザインの変更を行っている。四角氏とのコラボの企画を担当したのは、入社わずか3年目の若手女性デザイナーだった。彼女を抜擢した理由は20代半ばであり、ターゲットの年齢にピッタリだったからである。そして出来上がった試作品を下平氏は、「自分で作ったんだから、自分ではいてみて、体験してごらん」と言ってチェックさせたという。

これら地道な作業を経て最終形が完成し、セールス部門へプレゼンテーションを行って、めでたく発売の運びとなったのが10年5月である。試し売りとして市場に出した500枚はわずか1カ月で完売し、本年夏に行った11年春夏モデルの展示会では新たに投入する3タイプに、それぞれ5000枚ものオーダーが入ったという。