競争のなさを象徴する、「逆求人」サイトの誕生

私もこの数年、Z世代から、彼らの恵まれたバイトの就業状況の話を散々聞いてきました。

「バイトの時給が、年々上がっていく実感があります。時給を高くしないとバイトの応募がこなかったり、バイトがすぐに辞めちゃうみたいで」
「居酒屋など若者に不人気な肉体労働的なバイトは、単に時給が高いだけでは人が集まらなくなっており、数カ月に一度、皆で飲み会をやったりBBQをやったりして、バイトメンバー同士の仲を良くさせて、少しでも辞めにくい状況を作っているところが多いです。もちろん、こうした懇親会の費用は全てお店持ちです」

就職活動でも、この数年で、いわゆる「逆求人サイト」が盛り上がってきており、これも「Z世代」の恵まれた採用・就業状況を表しています。

「逆求人」とは、求人に対して学生が応募する従来型の就活スタイルとは異なり、学生がそのサイトに自分の強みや学生時代にやってきたことなどのプロフィールを載せ、それを見て魅力を感じた企業側からその学生にアプローチをするというスタイルの採用サイトです。

アベノミクス以降、2012年あたりから続く超売り手市場の中、従来の求人サイトで募集をかけても、学生からの応募が十分に得られない企業(主に知名度の低い企業、不人気の企業、中小企業)が増えていることがこうした逆求人サイトの誕生や普及の背景にあります。

逆求人サイトとして有名なものとして、OfferBox、キミスカ、doda キャンパスなどがあります。

企業側が学生を接待することも

逆求人サイトの中でも大変ユニークなものとして、ビズリーチが運営する「ニクリーチ」というものがありました。

これは「就活生と企業をお肉で繋ぐサービス」というコンセプトで、スカウトがきた就活生は企業から焼肉を奢ってもらえ、企業の人事担当者と交流できるというものです(ただし、2015年に始まったこのサービスは、コロナ禍の2020年7月30日に終了)。

就活生が焼肉をご馳走になりながらその企業の話を聞くことができる——まるでバブル期を彷彿とさせる、いや、それ以上のダイヤモンドの卵っぷりと言えます。

写真=iStock.com/TAGSTOCK1
※写真はイメージです

同世代の人口が多いので競争も激しく、加えてバブル崩壊によって景気も悪く、就職やバイトの状況が恵まれていなかった「ポスト団塊ジュニア」(1975~82年生まれ)の私は、いつもZ世代の話を聞いて、羨ましく思ってしまいます。

ただし、新型コロナの感染が広まってから急に、「バイトの面接って、どんなバイトでも基本的には落ちることはないものだと思っていましたが、コロナになってから周りで落ちる友達が増え、本当に驚きました」といった発言をZ世代の学生たちからたくさん聞くようになっています。また、前述したように、新型コロナによって第三次就職氷河期が生じる可能性もあるので、今後、少し状況が変わっていく可能性がある点は留意しなくてはいけません。