1億円持っていても「安心できない」
逃げ切り世代の一翼を担っている私たちの世代でさえ、長生きすることを考えると、怖くてお金が使えないという声を聞く。
たとえば、大手電機メーカーの本社で部長をやっていた同級生は、話を聞く限り自宅を含めて1億円くらいは持っているようだったが、安心できないといっていた。
今60歳そこそこで90歳まで生きるとしたら、残り30年弱ある。年金はあるにしても、単純計算で1億円を30年で割ると、年間300万円ちょっとしか使えないことになる。
1億円の中には自宅も入っているが、これからはどんどん家の価値は下がっていく。人口が減って、空き家が増えるから当たり前だ。そうすると、住宅の資産価値はどんどんゼロに近づく。
数十年後には不動産業界自体の行く末が危うい
もちろん、住宅の資産価値については立地によりけりではある。しかし、今よりも条件はシビアになるだろう。
たとえば、東京であれば新宿とか渋谷から30分の場所はもうダメになって、15分以内の場所でなければ売れないとか、たとえ主要駅から15分以内でも駅から徒歩10分ではダメで、5分以内でないと売れないとかいうように、どんどん条件が厳しくなっていくはずだ。
しかも、駅ごとに明暗が分かれてしまうから、これからは住む場所を選ぶのは非常に重要かつ難しい。このまま人口が減って、空き家が増え続けると、数十年後には不動産という業界自体、風前の灯になっているかもしれない。