介護格差はとんでもないレベルにまで開く

しかし、少子高齢化という問題は待ってくれない。そのときに国としてどういう政策をとるかも大事だが、個人としてどう考え、どう生きていくかが問われることになる。

成毛眞『アフターコロナの生存戦略』(KADOKAWA)
成毛眞『アフターコロナの生存戦略』(KADOKAWA)

そして、その際について回るのがお金の問題で、介護格差というのは、とんでもないレベルになるだろう。

聖路加国際病院の横に「サービス付終身賃貸マンション」が建っているのをご存じだろうか。そこに入居すると、何かあれば3分以内に手術ができるくらいの距離にあるため、相当高いだろうと思って料金を見たら、予想をはるかに超える金額で度肝を抜かれた。

65〜79歳で入居して2億〜5億円以上かかるというのだ。さすがになぜその値段なのか理屈がわからず呆然としてしまった。老後2000万円問題が容易に吹っ飛んでしまうくらいの金額だ。

とはいえ、私の知り合いにも40、50人はキャッシュで5億円払えるような人がいるのだから、日本全国には5億円払ってでも入りたい人は相当数いるのだろう。

5億円というのは極端な例で、多くの人にとっては関係のない話だが、金額の多寡は別として、長生きするというのはお金がかかるし、最期まで健康でいられる保証もない。つまり、長生きというのはリスクになってしまう時代が到来したということだ。

生活保護を受ける高齢者世帯は89万世帯以上

では、幸いにも医療・介護問題に直面しなければ、お金の問題から解放されたり、憂いのない人生の後半戦を送れるかといえば、そうではない。

今後は今以上に所得格差が拡大し、富裕層と貧困層とに二分されるからだ。というか、今でも既に二分されている。

2019年10月時点のデータでは、生活保護を受けている高齢者世帯は89万世帯以上で、全体の5割強を占めている。高齢者は旗を持ってデモをしないからわからないだけで、公営住宅とか、なんとか団地といったところの高齢化率、生活保護受給率はかなり高いだろう。

所得が低い層が集まるところでは商店街も廃れてしまう。1食350円の弁当でも買えないくらいの状態に陥っているからだ。

しかし、これは他人事ではないかもしれない。将来的に中間層の地盤沈下が進むと、誰もが同じような境遇になることだって十分考えられる。

先述したように介護職に労働力を割いたり、外貨が稼げなくなると、国際的なプレゼンスも低下し、国民の8割が下流化することだってありうるだろう。