重症者の増加に慌てふためくのはナンセンスである
11月13日付の朝日新聞の社説は「新型コロナの感染者が全国で増加傾向にあり、流行の『第3波』を迎えているとの指摘が相次ぐ。新たな病床や療養施設の確保に追われる自治体もある」と書き出し、次にこう指摘する。
「幅広くPCR検査が行われ、無症状や軽症の人も把握されて数字が積み上がっているのであれば、日々の動向に一喜一憂する必要はない。だが現実には、入院者、とりわけ重症者が増え始めており、最大級の警戒感をもって臨む必要がある」
「最大級の警戒感で進め」と朝日社説は警告するが、読者を脅かすことにならないか。感染者の数が増えれば、それに比例して重症者数も増えるのは当然だ。その感染症の論理を書かずに「重症者が増え始めている」とだけ指摘するのは全体像を見ていないことになる。
見出しも「コロナ急拡大 危機感もって手を打て」である。実におどろおどろしい。重症者の増加に慌てふためくのはナンセンスだ。重症者の対応は発生初期とはかなり変わってきている。
たとえば、静かに侵攻して命を奪うサイレント・ニューモニア(沈黙の肺炎)や血栓症などの血管障害、免疫システムが暴走するサイトカインストームなど重症化のメカニズムやそれに対する治療方法は確立しつつある。
テレビのワイドショーと同じなら、社説の存在価値はない
さらに朝日社説は指摘する。
「政府は先日の対策本部で、感染者が増加している地域での集中的な検査の実施や、外国人コミュニティーへの情報提供など、クラスター(感染者集団)対応を強化・推進していくことを確認した。『爆発的な感染は絶対に防ぐ』という菅首相の言葉を実践できるか、取り組みの真価が問われる局面だ」
「言葉を実践できるか」とまで書くが、朝日社説は安倍晋三前首相だけではなく、菅義偉現首相も嫌いなようだ。
朝日社説は書く。
「8日連続で感染者が100人を超えた北海道には国から感染症の専門家が入り、保健師を応援派遣する準備も進んでいる。だが広く国民に向けては、感染予防策の徹底を呼びかけるだけで、この先どんな事態になったら、どんな対策をとる考えなのかの説明はされていない」
「政府の分科会は8月、4段階の警戒レベルのうち上から2番目のステージになれば、飲食店や観光施設の入場・人数制限、県境を越えた移動自粛の徹底などを『講ずべき施策』として提案した。政府は、今後そうなった場合の経済的な手当てなどを早めに明らかにして、人々の不安を和らげ、協力を得られる環境を整えておく必要がある」
あらかじめ具体的対策を講じておくことには沙鴎一歩も賛成だ。しかし、社説が私たち国民の不安をかきたてるようななら、止めてほしい。テレビのワイドショーのような主張をするなら、社説の存在価値はない。