良い気分になることでストレスを解消する

さて何かストレスがかかる出来事があったとき、乗り切れる人もいれば、落ち込んでしまい、そこからしばらく抜けられない人もいる。実は、ストレスはその要因の大きさと比例せず、前述したように物の見方にもよるし、その解消法、すなわちレジリエンス(回復力)によっても左右される。

日本医科大学特任教授で心療内科医の海原純子氏がこう話す。

「以前、気持ちを表現しない抑圧傾向の男性がストレスチェックを受けました。本来めげてしまってもおかしくない状況でしたが、意外にも『心の元気度が高い』という結果でした。話を聞くと、私が書いている毎日新聞のコラム『新・心のサプリ』を毎回切り抜き、体と心に良いことをいろいろ実践していると(笑)。たとえストレスをためやすい弱点があったとしても、補うように工夫すれば乗り越えられます」

心の健康を維持するのに不可欠なものは、(1)深呼吸(2)適度に体を動かす(3)睡眠(4)気持ちを話せる仲間、友人、家族(5)自然のふれあいの5項目。海原氏は「いつも同じ手段を選択する人が多い」と指摘する。

「医者の場合、熱が出た患者を診察したときに、可能性がある病名をたくさん挙げ、その中から可能性が高いものを選べることが能力の高さだと言えます。症状からさまざまなことを読み取る力があれば、患者を治癒に向けて導けます。同じようにストレスを解消したいときや何かに迷っているときに選択肢が浮かぶ人ほど、問題にぶちあたったときに乗り切りやすくなるでしょう」(海原氏)

人は追い詰められるほど「この選択肢しかない」と思い込みがちだが、トレーニングを積めば複数の選択肢が思いつくようになるとのこと。

誰かと話す、動物を飼う、散歩をする、音楽を演奏する、料理をする、瞑想する、絵を描くなど、集中できる、または良い気分になれる“場所”や“こと”を少しずつ増やしていきたい。お酒は気持ち良い程度であればいいが、嫌なことから逃げる、忘れるために飲むのは依存となるので注意したい。海原氏は、自分なりのストレス予防策を立てたり解消することを「心の生活習慣」と呼んでいる。

「どうせ明日も会社に行けば体が汚れるからと、お風呂に入らない人はいないでしょう。心も同じです。大変だった日があれば、意識して心を洗いましょう」(同)

あなたは「心をきれいにする何か」をいくつ持っているだろうか。気持ちをリセットし、ストレス予防や回復力につなげていこう。

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