渡された水は14日分で500mlのペットボトル6本だけ

そして食事以上に衝撃的だったのは、4つ目の飲み物問題だ。

「水の支給はあったのですが14日分として500mlのペットボトルを6本渡されただけでした」

単純計算して1日あたり200mlほど、コップ1杯の水しか飲めないということになる。日本なら水道水を飲めば済むことだが、中国ではそうはいかない。水の硬度の違いというより、質の問題だ。中国では水源の汚染、水道管の老朽化等により、水道水を沸騰させても有害物質や重金属が含まれるケースが報告されており、しばしば問題視されているのだ。14日間のこととは言え、浄水器を通しているかわからない水道水は、たとえ沸かしてでも飲むのは避けたいところである。

「いくら何でも少なすぎました。なので、隔離メンバーみんなでホテル側に交渉したところ、追加で24本もらえました」

その交渉も全てWeChatで行ったそうだ。体温報告をするグループチャットには、ホテル側の担当者がついていて、隔離についての質問もすることができたという。そのやり取りを見せてもらったが、領収書や最終目的地への移動手段など1人1人の細かい質問に対し、スタッフから丁寧な返信があった。

最初に支給された水は14日間で500ml×6本のみ。交渉後、追加で24本が支給された。

「担当者は日替わりで、返事の速さは人によって異なりました。すぐ返事があることもあれば、スルーされることも。やりとりの中で翻訳アプリをフル活用しましたね」

「特別扱いされない」ことで困る場面が多かった

以上が平田さんが挙げる隔離生活での驚きや大変だったことだ。時間の過ごし方については幸いデスクワークがあったため、退屈することはなかったという。だが、そのほかホテル貸し出しの体温計が正しく計測できない、施設利用料の領収書がなかなかもらえないなど細かい部分での困りごとは多くあったそうだ。

隔離を終えた平田さんは14日間の隔離生活をこう振り返る。

「初めての隔離生活は何をとっても大変でした。そのなかで一番を挙げるとしたら『心細さ』が強かった空港での迷子でしょうか。外国人であることを理由に『コロナを持っているんじゃないか』と差別されたとか冷たい対応されたということはありませんでしたが……」

むしろ、中国人と同じ対応だったからこそ困ったというのが事実だろう。空港でも隔離施設でも、中国人と外国人は分けられず説明は口頭も書面も全て中国語だ。平田さんの場合、偶然同じグループに中国語が堪能な日本人がいて通訳してくれたことで事なきを得たが、外国人への配慮は感じられなかったそうだ。食事の内容や支払い方法についても同様だ。