中国慣れしていない人にとっては酷な環境だった
そんな平田さんのケースから見てとれるのは、まず「中国が水際作戦に総力をあげていること」だ。その一方で、水際作戦に注力するあまりコロナ禍での入国者というマイノリティーのなかの、さらにマイノリティーである「現地に慣れていない外国人」までの配慮は手が回っていないように感じられた。
「今、中国に入国するのは基本的に中国人や中国と深い関わりがある人が大半ですから」と平田さんは話す。現地法人がある会社に勤める平田さんも、ある意味中国と深いつながりがあると言えるが、彼本人は初めての中国赴任だ。そんな平田さんに中国人や頻繁に日中間を往来している人と同じように、少ない説明で理解し行動しろというのは酷だと言えるだろう。水際作戦は大きな問題なく遂行されているが、実は平田さんのような人がマニュアルの網の目からこぼれ落ちてしまっているのではないだろうか。
外国人ならではの問題への対策を強化してほしい
それでも現場では駐在員を必要としている。平田さんの会社でも1月の旧正月シーズンに中国事業所の日本人スタッフが帰国、その後新型コロナの影響で中国に戻れず、そのまま不在となっていた。日本人不在の長期化により会社の業績に深刻な影響を及ぼす恐れがあり、早急な赴任が求められていたのだ。
「私が何とか隔離生活を終えられたのは会社からバックアップがあったおかげです。それでも困ることはありましたが」
そして、「今後、私と同じ理由で中国に赴任する人は増えるかもしれません」と平田さんは予想する。
今後、多くの日本人が中国に渡ることになるのであれば、より一層の隔離生活に関する情報発信や、外国人ならではの問題への対策が求められるだろう。
隔離生活について、平田さんは終始、淡々と答えてくれていたが最後にこう述べた。
「もし個人での入国だったら、こんな隔離は耐えられなかったと思います」