入国早々、最大のピンチに見舞われる
「飛行機は定刻通りに上海浦東空港に到着したのですが、着陸後、防護服を着た中国人の職員が乗って来て『ああコロナなんだ』と実感しました。少しギョッとしましたが、防護服のスタッフと乗客の接触は特になかったです」
降機後、平田さんら乗客はパーテーションで1つ1つ区切られたカウンターに案内された。そこにも防護服を着た職員がおり、義務づけられている健康管理アプリの登録内容確認、空港でのPCR検査の同意書にサインし、検査へ。平時なら「空の玄関」と入国者を歓迎してくれる空港も、コロナ禍では水際作戦の最前線だ。当然、売店などの営業はなく、空港は物々しい雰囲気が漂う巨大な検疫センターと化していた。
手続きが終わり、いよいよ入国へ。ここで平田さんは隔離生活での最大のピンチに見舞われることになる。入国の際に、職員に目的地を尋ねられたところ、平田さんは目下の目的地・隔離先の「上海」と答えたのだ。
「これが修羅場の始まりでした」
道を尋ねても「あっちに聞け」とたらい回し
7月27日以降、上海市では最終目的地が上海の場合、現地に固定の住居があるなど一定の条件を満たす入国者の隔離措置として「集中隔離施設で7日間+自宅で7日間」も選択可能となった。また最終目的地が上海に隣接する3省の場合は条件つきで4日目以降の隔離を目的地で行えるようにもなっている。条件を満たさない、または満たしていても自宅隔離を希望しない入国者は上海の集中隔離施設で14日間の隔離措置がとられる。
職員が平田さんに目的地を尋ねた意図は、「14日の隔離期間を、どこで過ごす人か」の振り分けのためだったのだ。平田さんは最終目的地である天津と答えるべきだったところ、上海と答えたため、上海に住居を持つ人たちの待機場所に案内されたのである。しばらくして平田さんは間違いに気づいたそうだ。それなら本来、行くべきだった待機場所に行けば済むはずである。だが、平田さんは「たらいまわしにされた」と話す。
「戻る道を尋ねても『わからないから、あっちに聞け』と次々とたらいまわしにされたんです。みんな、自分の持ち場の仕事はしっかりするけれど他のことは一切関知しないというスタンスのようでした。そもそもスタッフの姿もまばらで、イレギュラーな対応まで手が回らなかったのかもしれません。そして英語が通じませんでした」