隔離施設の利用料約9万円は自腹
部屋の清掃がない以外に、ホテルでは以下のように隔離生活のルールが定められていた。
・毎日2回9時と15時に体温の報告義務。報告は中国のメッセージアプリ「WeChat」のグループチャットで行う。
・ホテル側とのコミュニケーションもWeChatのみ。
・食事は1日3回。7時、11時、17時に各部屋ドアの廊下側にある台の上に置かれる。
・ゴミは毎日回収。ゴミ袋にまとめて廊下に出すこと。
・面会、差し入れは禁止。
・飲酒、喫煙は禁止。
・脱走など違反者は最大で7日間の隔離延長措置。
特に人との接触は厳格に管理された。廊下には防護服を着た警備員が目を光らせ、一定時間ドアを開けているとアラームが鳴る。食事の支給時もスタッフが完全に立ち去ってから受け取るようにと厳しく伝えられたという。本当に14日間、誰とも会えないのだ。
なお、隔離施設の利用料は自己負担だ。隔離部屋への入室前に一括で支払うよう求められたが、クレジットカードは不可。平田さんは14日分の食費込の施設利用料+PCR検査料、合計5800元(約9万円)を現金で支払った。「念のため出国前に両替しておいて助かりました」と振り返る。
食事は「好き好んで食べるものではない」
部屋の環境は隔離生活のクオリティーを左右するものだが、同じくらい重要なのが食事である。平田さんは3つ目の困ったこととして食事を挙げた。
「食事は弁当です。おいしいおかずもありましたが、わざわざ買って食べるものではないですね」
食事のパターンは決まっていて、朝は粥、マントウ(具のない肉まんのようなパン)や油条(中国式揚げパン)、煮卵、おかず、ヨーグルト。昼と夜はご飯、主菜、副菜3種だ。生野菜は出ないが、たまに果物やフルーツジュースが出たという。
「私のホテルでは、弁当箱に仕切りがあるだけいいほうだったようです。他のホテルで隔離されていた人に聞くと、箱に仕切りがなくて手元に届く頃にはご飯と数種類のおかずが混ざってビビンバ状態になっていたそうです。
私は朝食に必ず出てくるお粥が苦手で、朝はマントウくらいしか食べられませんでした。スープに入った温かいキュウリの味も慣れませんでした。
中国人や、中国の食事に慣れている人なら大丈夫だと思いますが、私はちょっと厳しかったです」
基本的に出されたものを食べるしかないが、このホテルでは指定業者からのデリバリーが可能だった。
それでも、平田さんは利用しなかった。支払い方法が中国のキャッシュレス決済のみで、平田さんはそのアプリに登録していなかったためだ。
現在、中国のキャッシュレス決済の一部のブランドは、中国に銀行口座がない入国者でも制限つきで利用可能だ。しかし登録に中国国外、つまり日本の携帯電話の番号を必要としているという。平田さんはすでに中国の携帯番号に移行していたため、中国のキャッシュレス決済を利用できない状態だったのだ。
「一応、日本を出る前に『デリバリーができるホテルもあるらしい』という話は聞いていたのですが、どのホテルに当たるかは事前にわからないですし、14日間だけのことだからと思ってアプリは準備せずに来てしまいました。実際にメニューを見ると利用してみたくなり、後悔しました」